高齢者用の軟飯の作成や高温登熟障害の回避を育種で解決!

水稲生産における課題を育種で解決
地球規模の温暖化は、農作物の生育に多大な影響を与えます。2023年の猛暑では、新潟県産コシヒカリの一等米(米の外観を指標とした格付けでの最高ランク)はわずか4.9%となりました。また、介護食用の飯米や飼料米のニーズの高まりや、農家の高齢化など、水稲生産にはさまざまな課題があります。これらの課題を解決する方法の一つが、個別の目的に合った品種を作り出すことです。
介護用の軟飯に好適な水稲品種候補
例えば、コシヒカリはアミロース含有量が少なく、粘り気が強くておいしい品種ですが、介護食用の軟飯(半お粥)として炊くと粒が崩れてしまいます。高齢者が液体に近いものを食べると、食道ではなく気管に入りやすくなり、低アミロース品種の軟飯では誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすいことが問題となっています。炊飯時の加水量を多くして、軟らかく炊いても粒の形状をしっかり保てる高アミロース品種であれば、口腔内で固形物と認識できるので、介護用の軟飯に適しています。そこで、介護食用の軟飯に好適な高アミロースで、良食味の水稲品種の育成が進められています。
高温登熟障害の回避を目的とした品種改良
地球温暖化の進行は水稲の品質低下を生じさせる高温登熟障害の一因であり、一等米比率の低下に深刻な影響を及ぼします。出穂~出穂後の20日間の日平均気温が27℃以上になると腹白米や基白米などの白未熟米が増加しやすくなります。そこで、本研究では、気温が比較的低い7月上旬に出穂する極早生品種を用いることで、高温登熟障害を回避・軽減できる可能性があると考えられています。新潟県胎内市において、コシヒカリより17日程度早生のコシヒカリの同質遺伝子系統の品種を用いて、高温登熟障害の回避を目的とした新しい品種候補の育成を進めています。
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新潟食料農業大学食料産業学部 食料産業学科 アグリコース 助教上向井 美佐 先生
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