勉強へのモチベーションを高めるクラスの雰囲気とは?

勉強へのモチベーションを高めるクラスの雰囲気とは?

クラス全員の関係性でつくられる

新年度になり、クラスの個性(雰囲気)が徐々にできていくのを感じたことがあるでしょう。クラスの個性はクラスごとに違います。そこにいる児童・生徒と教師が育むもので、同じ個性は二つとありません。
「教育心理学」の分野では、クラスごとの個性と子どもの学習意欲の関係を解き明かそうとする研究が進んでいます。これまで、心理学での学習研究は、ネズミやハトなどを使った実験が主でした。学習意欲の研究も、報酬や罰を与え記憶にどのような影響があるかを調べることなどが主流だったのです。

やる気は伝わる

しかし、人間は動物と違って報酬や罰だけを理由に学ぶわけではありません。人間は社会的な生き物なので、学習意欲はその子一人の意識だけで決まるのではなく、学ぶ場所や教師の授業の進め方、周囲の友だちとの関わりあいの中で育まれるものです。教師が生き生きと教えれば、子どもたちも楽しく学びます。教師自身の教えるモチベーションが、子どもたちの学ぶモチベーションに伝播(でんぱ)するのです。

子どもを意欲づける指導技術の伝達

研究では授業の様子を録画し、教師の行動や仕草、言葉のかけ方、子どもたちの様子を記録します。一方で子どもたちに、クラスについて感じたことや学習意欲などのアンケートをとります。それらのデータをもとに、教師が何を伝えようとしていたのか、それが子どもたちにどのように伝わったのかを分析します。分析結果を教師に伝えることで、クラスの個性と子どもたちへの理解が深まり、自身の教え方のクセを振り返って、クラスづくりを考えるヒントにするのです。
近い将来、ベテランの教師が一斉に定年を迎え、貴重な経験や教える技術が若い教師に伝えられないまま世代交代してしまうかもしれません。優れたクラスづくりを分析し、研究者と教師が情報を共有し、これまで培われたノウハウを次世代に引き継ぐことが求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 教育学部 心理社会行動コース 教授 中谷 素之 先生

名古屋大学 教育学部 心理社会行動コース 教授 中谷 素之 先生

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教育心理学、学習心理学

メッセージ

学校が楽しい人も、反対につまらないという人もいることでしょう。「どうして楽しいのか」「なぜつまらないのか」をぜひ考えてみてください。「学び」は社会に出てからも形を変えて一生続きますが、学校はそのスタート地点となる重要な場所です。私の研究室では、子どもと先生との関わりあいを分析し、子どもの意欲を育て、引き出すにはどうすればよいかを中心に、現場の先生と一緒によりよい学校づくりを考えています。研究者として教育を考えることも魅力あふれる大切なことなのです。

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。