保育者としての専門性を可視化する
「子ども理解」から専門性をとらえる
例えば、保育者に対して「A君は友だちとよく遊ぶ活発な子ですが、自分勝手なところがあり、腕力も強いです。今日はB君と追いかけっこをしていて、捕まえられたら役を交代するルールなのですが、捕まえられても交代してくれません。B君は泣いています。」といった事例を提示します。このような状況で、どう対応しますか? という質問をします。すると、B君が泣いているので、すぐに介入して遊びを中断させるといった答えから、自分たちで解決してほしいからしばらく様子を見るといった答えまで幅広い答えが返ってきます。このように、同じ子どもの姿を見ても、何に着目するか、どのように理解するかはさまざまです。そのため、保育は「子ども理解」から始まるといわれ、その有り様で専門性の程度を評価することができます。
多角的にとらえて判断するプロセス
このような場面では、そのうち「なぜ泣いているの?」とB君に尋ねる子どもや、この状況を先生に伝える子どもも出てくるでしょう。子どもたちだけで問題を解決する可能性もあります。実はこの事例には仕掛けがあり、A君、B君の年齢を伝えていません。そのため、専門性に優れた保育者ほど不明な情報を確認して状況をより深く理解しようとします。そこにあるのは子どもの発達や保育環境に関する知識です。発達段階や条件によって取るべき対応は変化します。専門性が高い保育者は、目に見える情報だけでなく、多角的に状況をとらえてそれに応じた判断をしているのです。
可視化の必要性
小学校以降の先生の専門性は、教科をいかにうまく教えるか、という学習指導になります。ところが保育者は、子どもや乳幼児の発達や生活を援助するという役割なので、専門性が見えにくく、評価も簡単ではありません。そのため、保育者の仕事が専門的であることへの理解が低い現状があります。保育者の行為を丁寧に観察したり、子どもに対する見方や関わり方を聞き取ったり、可視化の方法を工夫し、保育者の専門性を可視化することが求められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
福山市立大学 教育学部 児童教育学科 准教授 上山 瑠津子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
児童教育学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?