答えのない問題に向き合うジャーナリズムの規範論

答えのない問題に向き合うジャーナリズムの規範論

ジャーナリズムの現場で起こる倫理的な問題

日々さまざまな事件や問題が起こっています。それらの現代史をリアルタイムで記録し、報道するのがジャーナリズムです。その担い手たちは、現場でさまざまな問題に直面しています。例えば、「事件の遺族から実名を報道しないでと頼まれたらどうするか」「災害が発生したとき自分の家族を守るか、報道を続けるか」といったことです。これらの倫理的な問題には、たった一つの確実な正解というものはありません。こうしたジャーナリストが直面している問題は、情報の受け手側も考える必要があります。

思考実験で問題と向き合ってみると

「原子力発電所で爆発事故が起こったら、記者を退避させるべきか?」について行われたグループ討論で、話し合いを2回おこなったときの様子です。1回目の話し合いの結果は、8割が「退避させるべき」でした。しかし、2回目の話し合いの結果、「現場にとどまって取材を続ける」と答える人が2倍に増えました。これは相手の意見に耳を傾け、冷静に考えることで視野が広がり、別の視点にたどり着けることがあるためです。最近は「論破」して相手をやり込める風潮がありますが、別の立場から物事を見て、答えのない問題を理性的に話し合うことが重要です。

現実世界の正解は一つではない

厄介な問題にぶつかったとき、安易に答えを決めて話し合いを止めるのは思考停止の第一歩です。すぐに手に入る情報だけをうのみにせず、一呼吸おいて自分の頭で考えることが大事です。相手の気持ちは最終的にはわからないかもしれません。それでも、道徳的に振る舞うことは、最終的に「幸せ」につながります。私たちがめざしているのは良き社会。そのゴールに向かって、それぞれが違う方法で歩んでいってもよい。自分とは異なる道を選んだ人に、自分の正義を押し付けるのではなく、ていねいに議論をして、なにが正しいことなのかを一緒に考えることが大切なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

龍谷大学 社会学部 総合社会学科 文化・メディア領域 ※2025年4月新設 教授 畑仲 哲雄 先生

龍谷大学 社会学部 総合社会学科 文化・メディア領域 ※2025年4月新設 教授 畑仲 哲雄 先生

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ジャーナリズム論、ジャーナリズム学

メッセージ

さまざまな事件を取材・報道するのがジャーナリストの仕事です。
インターネットの普及でニュースにすぐに触れられるようになりましたが、事件・事故・災害の現場では、道徳観が揺さぶられる悩ましい問題が起こります。見て見ぬふりをすることは、社会の、ひいては自分自身の幸せをも遠ざけます。ジャーナリストにはさまざまな角度から事件と向き合い、社会に報告する責任と義務があります。現実にしっかり向き合うためにも、考えることを止めず倫理観を養いましょう。

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あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。