答えのない問題に向き合うジャーナリズムの規範論
ジャーナリズムの現場で起こる倫理的な問題
日々さまざまな事件や問題が起こっています。それらの現代史をリアルタイムで記録し、報道するのがジャーナリズムです。その担い手たちは、現場でさまざまな問題に直面しています。例えば、「事件の遺族から実名を報道しないでと頼まれたらどうするか」「災害が発生したとき自分の家族を守るか、報道を続けるか」といったことです。これらの倫理的な問題には、たった一つの確実な正解というものはありません。こうしたジャーナリストが直面している問題は、情報の受け手側も考える必要があります。
思考実験で問題と向き合ってみると
「原子力発電所で爆発事故が起こったら、記者を退避させるべきか?」について行われたグループ討論で、話し合いを2回おこなったときの様子です。1回目の話し合いの結果は、8割が「退避させるべき」でした。しかし、2回目の話し合いの結果、「現場にとどまって取材を続ける」と答える人が2倍に増えました。これは相手の意見に耳を傾け、冷静に考えることで視野が広がり、別の視点にたどり着けることがあるためです。最近は「論破」して相手をやり込める風潮がありますが、別の立場から物事を見て、答えのない問題を理性的に話し合うことが重要です。
現実世界の正解は一つではない
厄介な問題にぶつかったとき、安易に答えを決めて話し合いを止めるのは思考停止の第一歩です。すぐに手に入る情報だけをうのみにせず、一呼吸おいて自分の頭で考えることが大事です。相手の気持ちは最終的にはわからないかもしれません。それでも、道徳的に振る舞うことは、最終的に「幸せ」につながります。私たちがめざしているのは良き社会。そのゴールに向かって、それぞれが違う方法で歩んでいってもよい。自分とは異なる道を選んだ人に、自分の正義を押し付けるのではなく、ていねいに議論をして、なにが正しいことなのかを一緒に考えることが大切なのです。
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