臨床心理学に求められる「円環」的なコミュニケーションの理解
カウンセラーと臨床心理学
現代社会では、心の不調を抱え、問題行動となる例が少なくありません。そうした人々の悩みに寄り添い、支援をするのがカウンセラーです。カウンセラーは、臨床心理学という学問を基盤にして相談者に向き合い、コミュニケーションを通じて、相談者自身が問題を乗り越えられるように支援します。そのため、コミュニケーションの力はとても重要です。どのようにコミュニケーションを行うことが、個々の相談者に最も有効なのかを探究することが重要なテーマです。
「円環」という考え方
コミュニケーションのあり方を「円環」という概念でとらえる考え方があります。これは、臨床心理学における家族療法のひとつとして提唱されました。多くの場合、ある人の問題行動の原因を、その人自身や家族などの言動に見いだそうとしがちです。例えば、「あいつの性格が悪い」、「親の離婚が子どもの非行につながった」などと、原因と結果を決めたがるのです。しかし、人間の行動は1つの原因に帰結できるほど単純ではありません。人、家族、コミュニティは相互に深く影響し合い、原因が実は結果であったり、その逆であったりします。つまり、人間関係を、一方通行ではなく円環的に深く認識することがとても重要なのです。
有効なコミュニケーションの方法を探る
実際にカウンセラーが相談者に向き合うときも、相談者がおかれた人間関係を円環的に認識することが大切です。その認識を土台としてコミュニケーションを図ることによって、今までとは違う視点で問題を見ることができるからです。
そうしたコミュニケーションのあり方を、一般化したり定型化したりすることは、容易ではありません。でも、円環的な認識を深めていくと、人々が相互に影響し合う関係性の中に1つのパターンが見えてくることがあります。相談者とカウンセラーが、そのパターンを変化させられるコミュニケーションができれば、問題解決の糸口が見えてくる可能性があります。その鍵を見つけることが、臨床心理学のテーマのひとつだと言えるでしょう。
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龍谷大学 心理学部 准教授 伊東 秀章 先生
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