医学では解明できない気の力、解明できる鍼(はり)の力
従来の医学では解明できない世界がある可能性
「気のせい」とか「あの人はよく気を使う」など、日本人は「気」という言葉をごく普通に使います。例えば「そんなのは気のせい」という表現は何を意味するでしょうか。西洋医学的に解釈するなら「気のせい」とは、すなわち「プラセボ(偽薬)効果」となるでしょう。ところが東洋医学で「気のせい」と言うときには、体中を巡っている「気」のせいなのだから決して無視できないといったニュアンスが入ってきます。
気が合う、合わないという言い方もあります。これもお互いが本来持っている「気」が合わないのなら、その2人の関係はうまくいかなくて当然、そう考えるのが日本人としては暗黙の了解と言えるでしょう。
「気の世界」は確かに存在し、「気」という言葉がこれまでの科学ではまだ解明できていない何か大事なものを表しているのではないか、そんな性質のエネルギーを持つ物質が体内にあるのかもしれないし、あるいは脳内にある何かを「気」は反映している。そうした考えが徐々に認められつつあるのです。
なぜ鍼は効くのか
「気」の正体がまだよくわからない一方で、鍼の効果は医学的に解明されてきました。鍼の役割は大きく分けて2つ、痛みを軽減する効果と体調を整える働きがあります。
なぜ鍼を打つと痛みが軽くなるのでしょうか。鍼を打てば体内にある種の「響き」が起こります。その響きがブロックとなり、ほかの痛みの感覚は脳に達する前に遮断されてしまうのです。もう1つ、鍼の響きによって「エンドルフィン」という麻薬のような物質が脳内で分泌されることがわかりました。この自家製麻薬が痛みを抑えるのです。
体調を整える働きについては、鍼の響きがおそらく自律神経に影響を与えるからだと考えられています。鍼によって神経にもたらされる刺激が、内臓を活発に動かしたり免疫力を高めたり、あるいは血管を広げて体を温めたりするのです。とはいえ、そうした作用が起こるメカニズムについては、まだ完全には解明されておらず、今後の重要な研究課題となっています。
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森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 教授 山下 仁 先生
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