知的障害のある子どもに対する性教育の現状とは?

知的障害のある子どもに対する性教育の現状とは?

知的障害のある子どもへの性教育

日本の教育機関では、教育指導要領に基づいて、性に関する指導=性教育が行われています。その対象には、当然知的障害のある子どもたちも含まれます。知的障害のある子どもたちに対する性教育のあり方は、教育学の分野でも研究されてきました。その多くは教育実践を扱ったものですが、より良い実践を成り立たせるためには、裏付けとなる理論を構築するための基礎研究が欠かせません。例えば教育学の論文などの文献や、学習指導要領をはじめとする教育行政文書の調査といった研究活動を通して、実践につながる理論を構築していきます。

基礎研究の役割

現在の日本では、残念ながら知的障害のある子どもへの性教育が十分に実践されているとはいえません。その要因や、どのようにすれば性教育の実践が進むのかを明らかにするために、1995年と2011年に全国の特別支援学校を対象とした大規模な調査を行いました。性教育に限らず、教育学の対象は「人」ですから、研究の結果も数式などで明確に表わせない側面もあります。しかしこうした調査を通してまずは現状を明らかにし、ぼんやりと見えていた問題のありかを明らかにし、より良い実践へとつなげることが基礎研究の役割です。

他者を尊重すること

多様性の尊重が求められる時代にあっては、性についても人それぞれのあり方が認められなければなりません。障害のある人も性の権利が保障されるべきですが、ともすれば「障害者の性を尊重してあげる」と、「上から目線」の接し方が目につくのも現実です。しかし、セクシュアルマイノリティや障害者といった「社会的に弱い立場に置かれている人」の権利を保障することは、自分自身の権利を守ることにつながるものです。現代のような人の優劣をはっきりさせる風潮がある社会では、なかなかこうした発想をもちにくいものです。だからこそ社会には「学び」が必要なのであり、その学びをつくっていくためにある学問が教育学なのです。

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立正大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 児嶋 芳郎 先生

立正大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 児嶋 芳郎 先生

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教育学、障害者教育学、社会福祉学

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メッセージ

高校までの学びを「学習」とするなら、大学以降の学びは「学修」です。高校生から見れば、大学は「知識を得る場所」だと見えるかもしれませんが、知識は新たな思考や価値観をつくるための土台にすぎません。ですからあなたも大学に進んだ際は、知識を身につけることだけに意識を向けるのでなく、知識という土台を踏み台にして、「新しい問いや答えをつくっていくんだ」という意識をもって、学習ではなく学修に励んでほしいと思います。

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立正大学は、9学部16学科を有し、多彩な学問分野において広く深く学ぶことができます。加えて充実したキャリア形成支援により、社会の多方面で活躍する優れた人材を輩出しています。本学は1872年(明治5年)東京・芝に開校の起点となる小教院を設立し、2022年で開校150周年を迎えました。品川キャンパスは山手線2駅から徒歩5分の都市型キャンパス、熊谷キャンパスは東京ドーム約8個分の広大な自然環境型キャンパスをもつ、学生数1万人を超える総合大学です。