フードサービス事業に重要なのは、顧客と事業側の感性
飲食の需要を考えた事業計画
進化を続けるフードサービス事業について、「事業性」「感性事業としての価値」などの研究が行われています。
事業性とは、飲食の需要を推定し、ベストな事業計画を作ることです。売上同様に、顧客満足度も考えなくてはなりません。例えばテーマパークの場合、昼はアトラクションを楽しむためにファーストフード店、夜は家族が食事を楽しむためのレストランが必要です。また顧客の目に触れないよう、地下やバックヤードに食材の搬入やゴミ出し経路を設けるなど、施設の設計そのものの計画も考えられています。
感性のバランス点を知る
「感性事業としての価値」とは、顧客の感性と事業者の感性を複合的に考えた事業の価値のことをいいます。ある研究で東京都内のオフィスビルにある55の社員食堂を調査し、その結果、提供数が1,000~1,500食になると、すしやそばなどに注文が偏り「食の専門化」が起こります。また、1,500食以上になると客席が増えて調理場が狭くなるため、調理済みの食材が多く使われることがわかりました。これらは顧客と事業者で作り上げた感性のバランス点で、社会や時代と共に変わっていき、事業計画や設計に大きな影響を及ぼします。
一方で、従業員の感性も重要です。従業員はプレゼンティズム(心身不調の中での勤務)の際に生産性が低下します。プレゼンティズムになりやすいのは洗い場や包丁を扱う現場が多いこともわかっています。事業者は従業員の感性を常に測り、健康経営を行うことが大切です。
地方創生にも一役
人は食事をするとき、いつ誰とどこで食べるのかでおいしさや楽しさの感性が変わります。現在はSNSでこうした情報がシェアされるようになり、顧客の感性は多様化しています。事業者はその変化への対応が求められます。
食の感性事業は地方創生事業にも重要で、単に食材に名称を付けてブランド化するのではなく、地域の特色や文化を感性として価値化することで、永続性や象徴性が担保され、より多くの地域の魅力の発信につながります。
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先生情報 / 大学情報
新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 ビジネスコース 教授 金子 孝一 先生
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