地理学は人間の営みまで映し出す

地理学は人間の営みまで映し出す

「人間」から見る「地理」の世界

教科書、地図帳とにらめっこ。そして、むやみに地名を覚える。サン=テグジュペリの『星の王子さま』にもそんな地理学者が登場します。そうしたイメージから、地理学はつまらないと誤解される向きもあるようですが、本来は自然から人間・社会まで幅広い事象を取り扱っており、若者文化やファッションまでをも対象にしてしまうのが地理学です。
例えば、民族の発生や文化と地理的条件との関係を研究する「文化地理学」は、場所、地域、あるいは環境の違いが、人間のモノの見方や文化形成にどのように関連するかを解明する学問です。具体的にはこんな例があります。
アメリカやカナダなどは多民族社会であり、そこにはいろいろな民族が共存して独自の文化が生み出されています。日系人のある家庭では、日系一世である祖父母は日本語を話し、二世の両親は日本語と英語、そして三世にあたる子どもは英語を話します。また毎日、ご飯を茶碗ではなく皿とフォークを使用して食べるなど、同じ日本人の血を引きながら、日本とは異なる生活様式が芽生えているのです。
こうした事例から、民族独自の文化がどのように持ち込まれ、変化してきたかという文化の流れや社会の仕組みを推察できます。注目すべきは、地域や場所を語る地理学には常に人間が介在していることです。違った視点から人間の感性や価値観を観察し、考察するのも地理学なのです。

まちの魅力を引き出す「地理学」

最近では、民族文化・伝統を継承するだけではなく、それを商品化し、観光産業に生かす取り組みも増えています。横浜の中華街なども、日本で異文化に触れることができる観光地として有名ですが、元は港町であり、商業を営む外国人が大勢寄り集まってきたことで独自の地域文化が築かれました。
このように、地域にはそれぞれ特色・特性があり、大きな観光地に限らず、各地でその土地ならではの魅力を伝えようとする動きが活発になっています。まちおこしや地域活性化という面からも、地理学のニーズは今後ますます高まるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京学芸大学 教育学部 人文社会科学系 人文科学講座 地理学分野 教授 椿 真智子 先生

東京学芸大学 教育学部 人文社会科学系 人文科学講座 地理学分野 教授 椿 真智子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

メッセージ

地理学は、自然環境から人間・社会・文化まで、ありとあらゆる現象を対象にしうる学問です。地図を見たり地名を覚えるのが苦手なのは、地理学の世界にまだ足を踏み入れていない証拠です。逆に、旅行や街歩きが好きならば、それは地理学への第一歩です。フィールドワークは、教師はもとより、さまざまな職業に役立つ経験となります。かつて地理学者は未知の大陸を追い求め世界中を探検しました。あなたも大学で地理学の未知の世界にふれてみませんか。

先生への質問

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