建物もセンサで健康診断を!

建築構造物の被災度判定を効率化
震災が起きると、現状では専門家が現地に赴いて損傷を受けた建物の外観を調査し、被災度を判定しています。しかし人手や時間がかかるほか、余震など安全面でも課題があります。そこで提案されているのが、センサを使った「建物のヘルスモニタリング」です。
振動からわかる建物の状態
建物は、自然現象や人の活動、車の往来などで常に小さく振動しています。そこで建物の各階に加速度を計測するセンサを設置して、建物の微小な揺れを常時計測してデータを取っておきます。地震が発生した場合、地震の前後でデータを比較して揺れ方に変化が見られれば、建物に損傷があることがわかります。変化があった位置や揺れの大きさから建物のどこがどの程度損傷したのかまで把握できるので、外観調査よりも正確で効率の良い被災度判定が可能です。
センサによるモニタリングの用途は地震だけではありません。例えば中古の建物を売買する場合、その建物の状態についての客観的な情報は、現状は築年数だけです。しかし建物の振動を新築時から継続的にモニタリングしておけば、建物の傷み具合をより詳しく評価することが可能です。
センサで雪下ろしのタイミングもわかる
新潟県などの豪雪地帯では、家屋の倒壊を防ぐために冬場の屋根の雪下ろしが必要です。雪下ろしは積雪深1メートルを目安に行われていますが、雪の状態によって重さは変わるので、積雪深は必ずしも雪下ろしが必要な重さに一致しません。これに対し、加速度センサを使えば屋根雪の重量を推定することが可能です。一般的に構造物は上が重いほど大きく揺れるためです。実際に屋根の雪の重さを測定してセンサによる推定値と比較したところ、正しく推定できていることがわかりました。雪下ろしをする正確なタイミングがわかれば、不要な雪下ろしをしなくて済み、毎年起きる死亡事故を減らせるとともに、高齢者の世帯が業者に外注するコストも削減できると期待されます。
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