雲を増やして地球を冷やす 環境変動を予測し防ぐエアロゾルの研究

雲を増やして地球を冷やす 環境変動を予測し防ぐエアロゾルの研究

エアロゾルとは

エアロゾルは、大気中に浮遊するごく小さな粒子です。代表的なものに黄砂やディーゼル排気粒子があります。エアロゾルの粒径は、数nmから10数μmと幅があり、大きいものは花粉のようにギリギリで目に見えるサイズです。自然由来のものもあれば、産業活動の結果として生まれるものもあります。PM2.5をはじめ、人間の健康に与える影響が話題になることが多いですが、地球環境にも多大な影響を及ぼしています。

雲を作り地球を冷やす

空に浮かぶ雲は水滴や氷の粒でできていますが、水だけでは雲はできず、核になるものが必須です。その核となるのがエアロゾルです。エアロゾルがなければ、雲ができず雨も降りません。雲は雨を降らすだけではなく、太陽の光を反射して地球の温度を下げる、日傘の役割も果たしています。雲をつくることで、エアロゾルが温暖化を防いでいるのです。
空気中のエアロゾルの密度が高い方が、雲の粒のサイズが小さくなります。小さな粒でできた雲は表面積が大きく、太陽光をより反射します。雨になりづらく、寿命も長いです。雲に日傘効果を期待するのであれば、エアロゾルが多い方がよいことになります。しかし、エアロゾルの濃度が高いと健康に悪影響を与える可能性もあり、増やせばよいというものでもありません。

気候変動の予測精度を上げる

無害なところでエアロゾルを増やす方法として、海水からできる海塩粒子をたくさん作ることが検討されています。海塩粒子は波しぶきからできるので、風が強くなれば、数が増えることは経験則でわかっています。しかし、理論的な裏付けは十分にはなされておらず、何が海塩粒子の粒径や組成を決めているのかを含めて研究が進められている段階です。
エアロゾルが地球を冷ます効果についてはほかにも未解明な部分があり、実験と観測、理論構築やシミュレーションに世界中の研究者が取り組んでいます。その研究成果は、将来の気候変動の予測精度を向上させ、社会への影響の考察に資するものです。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 総合科学部 国際共創学科 准教授 岩本 洋子 先生

広島大学 総合科学部 国際共創学科 准教授 岩本 洋子 先生

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地球科学、環境学

先生が目指すSDGs

メッセージ

スマホで大抵のことは調べられる時代ですが、得られる情報は限られています。現地に足を運んで現場を見ることは、スマホがない時代と変わらず大切です。私が手掛けている海の上のエアロゾルの研究では、データ収集のためにさまざまな場所に赴き、時には一カ月近くを船の上で過ごすこともあります。陸地から遠いところでも空気が汚れていることを実感したり、風が吹くと突然きれいになるのを目の当たりにしたりすることも、研究者としての大事な経験です。自分の目で見て体で感じることを大切にしてください。

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広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。