未知なる微生物をハントせよ! ~微生物の可能性を探る~
抗生物質も微生物から発見
微生物の世界は目には見えません。日本は微生物の種類が豊富だと言われていますが、現在発見されているのは地球上の微生物のうち、わずか5%ほどだと考えられています。微生物と私たちの生活には、どんなつながりがあるかわかりにくいのですが、薬の3分の1は微生物の研究から生まれたものです。この点だけでも微生物の恩恵を受けていることがわかります。未確認微生物をハントする研究が進められていて、知られていない微生物とその微生物が作り出す化学物質を見つけ出すことを「ケミカルハンティング」と呼んでいます。
危険を見つける「ウイルスハンティング」
一方、人間に害を与える微生物を見つけることもあります。近年よく耳にするウイルスも微生物や菌と関係が深いのです。遺伝子の配列から生き物の特長を明らかにする「ゲノム学」を使って、新ウイルスを発見することも可能です。これだけグローバル化が進んだ現在、ウイルスや菌も飛行機とともに日本に入ってくることも考えられます。日本にはいないウイルスの感染を知らせるニュースを目にするようになり、「〇〇ウイルス」という言葉を耳にする機会も増えてきました。病気にかからないために、病気を引き起こすウイルスを知る、こんな「ウイルスハンティング」の研究も行われているのです。
機能性食品の開発にも関係する「ゲノム学」
また、ゲノム学には多くの可能性が秘められています。これまで、交配合の繰り返しにより新しい農作物が作られてきましたが、ゲノム学を使えば時間をかけずに新しい品種を作り出すことも可能です。例えば、最近注目されている機能性食品ですが、栄養価の高い農作物を、ゲノム学を応用して作り出すことが始まっています。栄養価の高いものを遺伝子レベルで見分けて交配するのです。農産物の価値の一つの基準となっている甘さや香りなどがゲノム学の力で調整できる日も近いでしょう。ゲノム学は、生物学、環境学、食品学、薬学、コンピュータ科学と横断した学びができるのが面白いところです。
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先生情報 / 大学情報
東京家政大学 家政学部 環境教育学科 教授 藤森 文啓 先生
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