「水文学」でよりよい川の未来を創ろう!
人間の活動で変化する河川環境を知る「水文学」
水の循環を扱う学問領域を、「水文(すいもん)学」と言い、その範囲は地域の川から地球全体の水循環にまでおよびます。水文学の研究では、川の防災や水資源量の把握のため、降水・蒸発などを考慮して、上流から河口までの水量の変化を数値化する「水文モデル」が作られてきました。河川の水量が予測できるようになれば、水の流れ方が変わるような大規模な河川工事などの人間活動や気候変動によって河川環境がどう変化するかもわかり、さらに、それらの今後の変化も予測出来るため、大変魅力的なツールであると言えます。
河川生物まで含めた「モデル化」
将来の河川環境を予想するための「モデル」を作るには地道な環境調査も欠かせません。河川を調査する場合は、1年から2年という長期間、刻々と変化する要素の測定を行うこともあります。上流にダムができたことで、どんな影響があるのかといった調査もよく行われます。流れの速い場所、遅い場所、川幅の広い場所、狭い場所。こうした川の特徴も重要なチェックポイントです。
さらに、水生昆虫などの川の生き物も「モデル化」の対象になり得ます。例えば、ヒゲナガカワトビケラなど、指標となる生物種を採集した現地調査結果(いるorいない、生息環境など)を水文モデルと組み合わせて機械学習手法なども活用して解析します。さらに進んだ研究では、流量や流速の変化などによって遺伝的分化や適応が起きているかどうかなども見ることができます。
多くの河川で地道なローカル研究が役立つ
全国的な気候変動や地球温暖化の河川環境への影響については、まだまだ検討データが不足しています。これらの調査は10年以上のスパンで必要になります。開発工事だけでなく、気候の変化が及ぼす影響を数値化し、洪水時などの流れがどう変化するかも予測します。これは防災上重要な基本データにもなります。環境を含めた河川の総合的研究は、社会インフラに役立つ情報を提供するとともに、生態系の多様性を守ることにもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
宮崎大学 工学部 工学科 土木環境工学プログラム 准教授 糠澤 桂 先生
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