貧困と格差社会を描き続けた作家ディケンズ
19世紀の『ONE PIECE』
チャールズ・ディケンズは、『オリバー・トゥイスト』や『クリスマス・キャロル』、『大いなる遺産』などの名作で知られる、イギリスの国民的作家です。ディケンズの作品は人気が高く、人々は彼の連載小説を読むのを、今で言えば漫画『ONE PIECE』を追いかけるように楽しみにしていました。最新号の雑誌がアメリカに届く時は、早く読みたい読者たちが港で待っていたというエピソードからも人気のほどがうかがえます。
貧しい人々に向けた優しいまなざし
ディケンズが活躍したヴィクトリア時代はイギリスの全盛期である一方で、貧富の差が拡大した時代でもありました。父親の破産で自身も苦労したディケンズは、貧しい人々に優しいまなざしを注いだ作家として知られ、作品を通じて貧困や格差社会の深刻さを社会に訴え続けました。代表作の一つである『クリスマス・キャロル』は、金持ちでケチな老人スクルージが、貧困にあえぐ人たちや守銭奴である自身の悲惨な末路を精霊から見せつけられて、改心するというお話です。本作がきっかけで、スクルージはケチを意味する単語として使われるようになりました。
ディケンズの描いたロンドン
ディケンズはロンドンを描き続けた作家として知られています。19世紀のロンドンは都市化が進む中で生まれる貧民街や飢えた子どもたちの問題、さらには公害など、様々な問題を抱えていました。こういった問題にディケンズが深い関心を寄せ、作品を通じた社会改良を目指していたことは間違いありませんが、一方でロンドンの雑多な風景に魅せられ、見世物としての都市空間を面白おかしく描いています。『ボズのスケッチ』や『ピクウィック・ペーパーズ』のようなユーモラスな初期作品に比べると後期の作品はより深刻な社会問題を扱う傾向がありますが、ディケンズは街の中に面白いものを見つけようとするエンタメ好きな一面と、社会問題を真面目に考えるモラル的な視点を生涯持ち続けており、その二面性に対する分析が進められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。