「おもしろさ」の価値を考えると、世の中が見えてくる
日常の中で笑う場面を考えてみると
例えばお笑いを見たり、友だちとジョークを言ったりする時に、どういうものを「おもしろい」と思っているかは人それぞれです。「ユーモアの哲学」では、まずおもしろいという物事の性質、つまり価値がどういうあり方をしているか、日常の中のさまざまな「おかしみ」に人がどう反応しているかを見ます。感情が湧き上がるような経験とおもしろさの価値は結びついていますが、そのペアは固定ではありません。子どもと大人ではおもしろいものが違うなど、年齢や文化、時代や場所によっても「感情と価値」のペアは変わります。それらを記述していくことで、おもしろいという価値がどういうふうにできあがっているのかを見ていきます。
誰もが納得する答えをめざすのではない
そこから「おもしろいという性質」は主観的なのか客観的なのか、「おもしろいという判断」に正しい/間違いがあるのかといったことを考えていきます。そうすることで、「おもしろさとは何か」といった答えを出すのではなく、おもしろさという価値とおかしみを感じる感情との間にある「関係の理解」を深めていくのです。例えば「キモい(気持ち悪い)」は嫌悪感というマイナスの感情と結びついていましたが、時代の変化によってかわいいとかおもしろいといったポジティブな反応に結びつく場合も出てきました。ほかにも世の中にあるジョークが差別と結びついて、笑いと隠された差別との関係やその歴史的な経緯が見えてくるといったこともあります。
人が何かを経験するという「現象」に注目
「現象学」は私たちが普段生きている中での経験で、見過ごされてしまうような構造に目を向けて、そこから私たちがどのように生きているのか、世界がどのようなあり方をしているのかを考えます。「感情と価値」についても、科学的データから出発するのではなく、日常で何かおもしろいとか、気持ち悪いと思ったりする経験に足場を置く「現象学」のアプローチを取りながら深く考えていきます。
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