「おもしろさ」の価値を考えると、世の中が見えてくる

「おもしろさ」の価値を考えると、世の中が見えてくる

日常の中で笑う場面を考えてみると

例えばお笑いを見たり、友だちとジョークを言ったりする時に、どういうものを「おもしろい」と思っているかは人それぞれです。「ユーモアの哲学」では、まずおもしろいという物事の性質、つまり価値がどういうあり方をしているか、日常の中のさまざまな「おかしみ」に人がどう反応しているかを見ます。感情が湧き上がるような経験とおもしろさの価値は結びついていますが、そのペアは固定ではありません。子どもと大人ではおもしろいものが違うなど、年齢や文化、時代や場所によっても「感情と価値」のペアは変わります。それらを記述していくことで、おもしろいという価値がどういうふうにできあがっているのかを見ていきます。

誰もが納得する答えをめざすのではない

そこから「おもしろいという性質」は主観的なのか客観的なのか、「おもしろいという判断」に正しい/間違いがあるのかといったことを考えていきます。そうすることで、「おもしろさとは何か」といった答えを出すのではなく、おもしろさという価値とおかしみを感じる感情との間にある「関係の理解」を深めていくのです。例えば「キモい(気持ち悪い)」は嫌悪感というマイナスの感情と結びついていましたが、時代の変化によってかわいいとかおもしろいといったポジティブな反応に結びつく場合も出てきました。ほかにも世の中にあるジョークが差別と結びついて、笑いと隠された差別との関係やその歴史的な経緯が見えてくるといったこともあります。

人が何かを経験するという「現象」に注目

「現象学」は私たちが普段生きている中での経験で、見過ごされてしまうような構造に目を向けて、そこから私たちがどのように生きているのか、世界がどのようなあり方をしているのかを考えます。「感情と価値」についても、科学的データから出発するのではなく、日常で何かおもしろいとか、気持ち悪いと思ったりする経験に足場を置く「現象学」のアプローチを取りながら深く考えていきます。

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宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 言語・文化専攻 准教授 八重樫 徹 先生

宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 言語・文化専攻 准教授 八重樫 徹 先生

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哲学、倫理学

メッセージ

私は高校時代に小説を読むのが好きで、そこから人間や心について考えたいと思った時に、哲学という学問があることを知りました。多くの人の哲学へのイメージは、何だかよくわからない、難しい、答えが出ないことを永遠に考えているといったものでしょう。でも実際に哲学の本を読んでみると、非常に具体的な問題を考えているものが多く、おもしろいものです。昔の哲学者の本でもよく考えればわかります。何かを覚えるというよりは、考えたり議論したりすることが好きな人に向いている学問だと思います。

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本学は教養教育中心の小規模大学で、日本の国公立大学の中で数少ない本格的なリベラル・アーツ大学です。個別的な分野を狭く研究するのではなく、自由な精神で学問の本質を研究し、専攻分野に縛られず幅広く学ぶことで、専門性に裏付けられた総合力が発揮できる人間性豊かな人材育成を目標としています。「少人数教育」「活発な国際交流(海外留学)」「充実した就職支援」等が主な特徴で、小規模を活かしためんどうみの良さで、教職員が学生一人ひとりをしっかりとサポートします。