「めっき」が電子機器の小型化を支える
薄皮一枚で素材が変身
屋根に使われるトタンと、缶詰の缶のブリキは、素材は同じ鉄です。鉄の板の表面に亜鉛をつけるとトタン、錫(すず)をつけたらブリキです。亜鉛はさびませんが溶けます。錫は傷をつけたらさびが出ますが、密閉していれば溶けることはありません。素材が同じでも表面の薄いめっきが違うだけで、機能が大きく変わるのです。そのため、めっき技術は建設資材のような大きなものから、家庭で使われるスプーンなどの小物に至るまで、幅広く使われてきました。
半導体やプリント基板の製作にも
1990年代中頃には、めっき技術は成熟したものと考えられ、その研究が下火になりました。しかし、半導体やプリント基板の製作のためにめっき技術が使われるようになり、再び脚光を浴びます。そのきっかけは、1997年にIBMが半導体の配線に電気銅めっき法を使ったことです。それまでは、半導体の配線はアルミを使い、スパッタリングと呼ばれる方法で行われていました。その後、性能の向上のためにアルミよりも抵抗が低い銅を使うことが望まれるようになります。しかし、スパッタリング法では微細なパターンに銅を満たすのが困難で、また銅の成膜速度が遅いという問題もありました。電気銅めっき法によってこれらの問題が解決されたことでめっきの利点が注目を浴び、配線以外にもめっきが盛んに使われるようになっています。
環境負荷の低減もテーマ
半導体デバイスの異なる層の間で電子を移動させるための「ビア」と呼ばれる穴があります。深さの異なる穴にも均一に銅膜を張ることは、めっき法以外では不可能でしょう。半導体デバイスのさらなる微細化、高性能化が求められる中で、それに対応するめっき技術の開発に期待が寄せられています。
また、半導体分野以外でのめっき技術の大きな研究テーマとして、環境負荷の低減があります。従来からめっきに使われてきた重クロム酸カリウムやリンといった、環境負荷の大きい物質をより環境に良いものに置き換えるための研究です。
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