日本語教育教材の多様性~アニメとナレーション~
「来週はテストです」「まじか、死ね」
日本語学習者には、アニメが大好き、アニメに惹かれて日本語を学び始めたという学習者が大勢います。特に、海外のように日本語を使う環境がほとんどない場合、アニメが学習者の日本語の世界になりがちです。お気に入りの作品からの学びは楽しいですし、それも一つの方法です。しかし、ある大学で「来週はテストです」と言った教員に、「まじか、死ね」と答えた学習者もいます。これは、アニメの英語字幕が“No way!”となっていたものをそのまま覚えて使ったからです。アニメのキャラクター口調は、不適切な使い方をしていることもあるので、面接などの正式な場ではコントロールも必要なのです。
ボイスサンプルの活用
日本語学習の音声教材に、ナレーションの「ボイスサンプル」を活用する研究があります。ナレーターが自分の声をクライアントに伝えるボイスサンプルは、発音や抑揚が明瞭で、内容も思わず引き込まれるような工夫がこらされています。そのボイスサンプルを副教材として使用すると、学習者の意欲や学習参加率が向上することがわかりました。
ボイスサンプルに加えて、ナレーターの訓練方法を日本語学習に取り入れる試みもあります。学習者自身が魅力的だと感じたボイスサンプルを何度も聞いて文字に起こし、発音や抑揚もそっくりに再現できるまで何度も声に出すという方法です。これにより「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能すべての学習効果が得られるだけでなく、学習者自身のボイスサンプルを評価することで、「伝える技術」の向上にもつながります。
意欲的に学ぶために
従来の日本語学習教材の多くは、習った語彙(ごい)や文法を積み上げながらレベルを上げていく仕組みです。これは文法的に正しい日本語の基礎を習得するうえで不可欠です。一方で、習ったことのない語彙や文法が出てくるボイスサンプルのような素材も、楽しく意欲的に学べる副教材として生かす取り組みが増えています。
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先生情報 / 大学情報
専修大学 国際コミュニケーション学部 日本語学科 教授 王 伸子 先生
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