公園のベンチから企業のアジア戦略まで、広がる「都市計画」
拡大する「都市計画」の研究対象
最近の「都市計画」の研究対象は、より幅広くなりつつあります。2004年に国が景観法を制定したので、とりわけ、「都市デザイン」と呼ばれる分野が注目されています。
例えば、公園のベンチなどは「ストリート・ファニチャー」と呼ばれますが、座り心地が良く、見栄えも美しく、交通の妨げにならない、といった条件が求められます。また、空港・駅などは、日本ではあまりに没個性的でどの都市も均一化していますが、旅行者の目線では非日常であるこれらの空間を「小さな都市」としてとらえるため、そのデザインやあり方の研究が求められています。
東京、ソウル、上海……どこを拠点とするか
さらには、グローバリゼーションが高まるなか、アジア各国間のある闘いが水面下で始まっています。
例えば、欧米の企業がアジア支部設置を検討する場合、建築技術や通信コストには大差がないことから、「都市の面白さ」という付加価値で選ぶ時代になったとも言われているからです。各企業は単にビジネスの拠点としてだけでなく、そこに住む社員の生活が、より豊かで快適になる都市を選ぶというのです。
このようにビジネスの場面でも、国家規模の都市デザインが不可欠な時代となっています。
これからますます成熟する日本の街並み
日本はかつての右肩上がりの経済成長の時代は終わり、これから混迷の時代を迎えようとしています。
しかし、日本における「都市計画」の伸びしろは、じゅうぶんにあると言われています。日本人は高級ブランド品を買いあさるバブル期や大量消費の時代を経て、「本当の意味での豊かな人生とは何か?」という意識に向き始めているからです。
今後の行政にも、無駄を極力排除し、「暮らしやすい豊かな街づくり」が求められると予想されています。
豊かな都市空間をつくることが、ひいては地球環境の保護にもつながります。建物を外側の世界を含めてマクロにとらえ、数値化しにくい人々の心のゆとりや楽しさ、豊かさに、どう貢献するかを追究するのが、「都市デザイン」という学問なのです。
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