講義No.13401 獣医学

動物たちに最適な放射線治療を がん症状を緩和しQOLを上げる

動物たちに最適な放射線治療を がん症状を緩和しQOLを上げる

放射線治療でがんの症状を和らげる

獣医療の進歩や飼育環境の改善で、犬や猫の寿命は昔に比べて長くなりましたが、高齢化によりがんにかかってしまう犬や猫が増えています。がんの治療には、根治を目的とした治療と、根治が難しい場合の緩和治療があり、そのひとつが緩和的放射線治療です。放射線治療は痛みが少なく、体の機能を温存できるメリットがあります。その一方で、獣医療においては放射線照射のたびに麻酔が必要であり、動物や家族への心身的・経済的負担が掛かるデメリットもあります。そこで、できるだけ治療効果を下げずに放射線照射の回数を減らす方法が研究されています。

少ない照射回数で効果を上げる

そのひとつが、放射線治療に併用して効果を高める、放射線増感剤の研究です。放射線治療では、放射線で直接がん細胞のDNAに損傷を与えるとともに、酸素を酸化力の強いフリーラジカルに変えて、間接的にもDNAを破壊します。大型の腫瘍組織内部は一般的に低酸素下にあるため、放射線に対して抵抗性を示すとされています。したがって組織の酸素濃度を上げる仕組みについて検証が行われています。
また、がんが再発して放射線を再照射する場合、最初の照射から期間が短いと放射線障害が生じてしまうため、どのような条件での再照射が最適かについても研究が進められています。

大切な家族である動物たちのために

犬や猫の鼻の腫瘍は、手術で切除してしまうと術後の動物の生活の質が低下し、見た目にも痛々しく家族がつらい思いをすることも少なくありません。その点、放射線治療を行えば、鼻詰まりが解消されて食べ物も食べられるようになり、延命効果も期待できます。また、骨肉腫など骨に転移する腫瘍は強い痛みを引き起こしますが、放射線治療で痛みを緩和できます。
病気になった動物たちが少しでも残りの時間を楽に過ごせるよう、今後も放射線治療の研究は進められていきます。

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帝京平成大学 健康医療スポーツ学部 医療スポーツ学科 動物医療コース 助教 近藤 佑衣 先生

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動物生命科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

これからいろいろな専門分野を勉強していくことになると思いますが、勉強した先に自分は何ができるのか、勉強する目的を持つといいと思います。目的があれば、それを軸にして、どのような勉強も楽しくできるのではないでしょうか。私の場合は動物が好きなので、動物に関わる仕事がしたいという目的を持って勉強してきました。高校生だと、まだまだ目的が見つかっていないかもしれませんが、いろいろなことに興味を持って、できれば自分の勉強する目的を見つけてみてください。

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