講義No.05530 獣医学 医学

グローバル化や豊かさによって、感染症が再び世界の脅威となった

グローバル化や豊かさによって、感染症が再び世界の脅威となった

感染症が再び世界を襲いはじめた

先進国では、細菌やウイルスなどを原因とする感染症は、数十年前にすでに制圧されたと考えられていました。しかし1990年代に入るころから状況は変わりました。BSE、O157、SARS、インフルエンザといった感染症が各地で猛威を振るうようになったのです。グローバル化が進み、人や物の行き来がこれまでになく迅速・大量になったことで、地球上のどこかで感染症が発生すると瞬く間に世界中を駆け巡るようになりました。その感染源の多くが牛、豚、鳥といった家畜など、動物です。そのため、獣医学の立場から国際的に防疫対策を取ることが重要になったのです。

経済性を求めることで発生する感染症も

これらは「新興・再興感染症」と呼ばれますが、近年注目されるものとして薬剤耐性菌があります。薬に対して抵抗力を持った菌の総称ですが、そのうち、発生源が動物のものが多くあります。その原因の一つは、牛、豚、鶏といった家畜を短期間で成長させるために飼料添加物として使われる抗生物質です。特に発展途上国においてこれが多用されることで、動物の体内に耐性菌が出現しやすくなります。それが人の食料を通して人間に感染するのではないかと考えられています。

人に感染するかどうかは容易にはわからない

ほかにも問題となる例としてカンピロバクター感染症があります。原因となる細菌は、1900年ころから動物の体内にいることが知られていましたが、当時は人には感染しないと考えられていました。それが1960年代になって患者検体からも見つかったことをきっかけに、人にも感染することがわかってきました。どのような細菌やウイルスが人に感染するのか、また感染しても発症するかどうかなどわからないことが結構たくさんあります。食文化が多様になったことも、いろいろな感染症が発生している要因です。肉などを日常的に食べるようになったことで、さまざまな細菌やウイルスが私たちにも身近な存在になったのです。豊かさと表裏一体の問題とも言えるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 獣医学部 獣医学科 教授 山崎 伸二 先生

大阪公立大学 獣医学部 獣医学科 教授 山崎 伸二 先生

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獣医学

メッセージ

高校では、答えのある問題に対してその答えを如何に早く見つけだすかを学んでいることでしょう。しかし大学では、自分で問題を設定し、その解決方法を見つけだすことを学ぶことが求められます。獣医学類の受験生には、将来は動物の病気を治す獣医師になりたいという人が多いと思いますが、獣医学はとても幅広い学問です。例えば、私が取り組んでいる食の安全や感染症の問題も獣医学で扱います。食の安全や感染症の分野で国際的に活躍できるエキスパートをめざしませんか? ぜひ、大阪府立大学の獣医学類の受験に望んでください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。