グローバル化や豊かさによって、感染症が再び世界の脅威となった
感染症が再び世界を襲いはじめた
先進国では、細菌やウイルスなどを原因とする感染症は、数十年前にすでに制圧されたと考えられていました。しかし1990年代に入るころから状況は変わりました。BSE、O157、SARS、インフルエンザといった感染症が各地で猛威を振るうようになったのです。グローバル化が進み、人や物の行き来がこれまでになく迅速・大量になったことで、地球上のどこかで感染症が発生すると瞬く間に世界中を駆け巡るようになりました。その感染源の多くが牛、豚、鳥といった家畜など、動物です。そのため、獣医学の立場から国際的に防疫対策を取ることが重要になったのです。
経済性を求めることで発生する感染症も
これらは「新興・再興感染症」と呼ばれますが、近年注目されるものとして薬剤耐性菌があります。薬に対して抵抗力を持った菌の総称ですが、そのうち、発生源が動物のものが多くあります。その原因の一つは、牛、豚、鶏といった家畜を短期間で成長させるために飼料添加物として使われる抗生物質です。特に発展途上国においてこれが多用されることで、動物の体内に耐性菌が出現しやすくなります。それが人の食料を通して人間に感染するのではないかと考えられています。
人に感染するかどうかは容易にはわからない
ほかにも問題となる例としてカンピロバクター感染症があります。原因となる細菌は、1900年ころから動物の体内にいることが知られていましたが、当時は人には感染しないと考えられていました。それが1960年代になって患者検体からも見つかったことをきっかけに、人にも感染することがわかってきました。どのような細菌やウイルスが人に感染するのか、また感染しても発症するかどうかなどわからないことが結構たくさんあります。食文化が多様になったことも、いろいろな感染症が発生している要因です。肉などを日常的に食べるようになったことで、さまざまな細菌やウイルスが私たちにも身近な存在になったのです。豊かさと表裏一体の問題とも言えるでしょう。
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大阪公立大学 獣医学部 獣医学科 教授 山崎 伸二 先生
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