抗菌・抗バイオフィルム成分×特殊セラミック 新技術の抗菌シート
細菌がくっつくネバネバを防ぐ
この新技術の抗菌シートには殺菌だけでなく、細菌がくっついて「バイオフィルム」というネバネバのかたまりになるのを防ぐ作用もあります。排水管のヌメリ、虫歯の原因となる歯石(しせき)など、細菌はバイオフィルムになって悪さをするので、細菌を退治するのにバイオフィルムを防ぐのは効果的です。特に感染症対策においては、殺菌作用のある抗菌剤を使うと、弱い菌から死滅して強い菌が生き残って増えてしまう「薬剤耐性菌」の問題があります。殺菌だけではない「抗バイオフィルム」の研究は重要なのです。
スポンジ様多孔質構造で抗菌効果が長持ち
薬学部では、感染症の原因となるウイルスや細菌などの微生物の研究が行われています。薬用植物などから見つけ出された抗菌や抗ウイルスの物質は、その特性を生かして、薬だけでなく、さまざまな抗菌・抗ウイルス製品として実用化されています。
実用化の手法の一つはコーティングです。プラスチック素材に抗菌や抗ウイルスの成分を混ぜて、製品を形成する方法がよく使われています。そんな中で、最新の工学の技術を取り入れることで効果が長持ちする、新たな抗菌シートが開発されました。スポンジのようにたくさんの小さな穴が開いた特殊なセラミック素材で極薄のシートを作り、そのシートに抗菌物質をしみこませて、穴からじわじわと成分がしみだす仕組みです。
抗菌シートがあると安心?
この抗菌シートは、製品化のために生産・流通のしやすさや、価格などもよく考えて作られています。また、シートを薬局のカウンターなどに設置して、利用する人たちが目には見えない抗菌効果をどのように感じるのか、心理学の研究者が加わっての調査も行われています。
新型コロナウイルスが世界をゆるがしたように、感染症は世界共通の問題です。感染症対策に役立つ技術や製品は、より多くの人に届くことも大切であり、技術・製品開発にはさまざまな専門家のコラボが必要とされています。
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先生情報 / 大学情報
就実大学 薬学部 薬学科 准教授 山田 陽一 先生
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