遺伝と環境、個性を決めるのはどっち?
私たちの個性
成績や運動能力のような特性や性格の違いなどの個性は、生まれもった遺伝によるものと、育ってきた環境のどちらが影響するでしょうか。結論から言えば、遺伝と環境の両方であり、それぞれの要素が重なり合いながら影響しています。心理学では、遺伝や環境の影響の度合いを数値化することで詳しく解明しています。
遺伝や環境の影響の計算
まずは、個性を数値で表す必要があります。IQやパーソナリティの得点は人の個性の一面を数値化したものです。集められたデータの平均からの偏差から計算される分散が大きければ大きいほど個人差が大きい集団であることを示します。ここで、その中の遺伝や環境の影響を特定するためには、一卵性双生児と二卵性双生児それぞれのデータを収集します。一卵性双生児は一つの受精卵から成長するので遺伝子要因は100%共通です。二卵性双生児は別々の受精卵から育つため、遺伝子要因は一般的な兄弟と同じ平均50%の共通性です。それぞれの共分散のモデルを立てて、そこに類似度の係数を加えると連立方程式となり、遺伝子の影響度合いを求めることができます。
環境での違い
先行研究では、認知能力における遺伝子の影響が、日本やヨーロッパでは5~7割程度であるのに対してエジプトではごく僅かという結果が示されました。この差は、貧富差や階級差などの社会環境の固定化によるものが一因だと考えられます。また、アメリカにおいて親の学歴や世帯年収などの社会経済的地位(SES)で分類した調査では、SESが高くなるほどIQへの遺伝の影響が大きくなっています。これらの研究から、自由な社会環境下にいれば生まれもった個性を遺憾なく発揮できますが、固定的な社会では個性を伸ばすことが困難であると解釈することができます。
このように、心理学では心を客観的な指標である数値に示して解析しています。現在では塩基配列が解明されて、遺伝や行動に関するビッグデータが蓄積されてきています。これらの数値を解析することで、新たな側面が見つかるかもしれません。
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