微生物・植物・食材の未知の成分から薬や機能性食品を創る
天然資源からバイオプローブを見つける
日本の豊かな自然の中には、まだ知られていないヒトの健康に役立つ物質(宝物)が眠っています。ケミカルバイオロジーという学問では、微生物、植物、食材などから、がんやアレルギーなどの生活習慣病の予防や治療に有効な生物活性物質(バイオプローブ)を単離精製し、その物質の構造と作用メカニズムを解明し実用化をめざします。歴史的なバイオプローブの一つが、フレミング(英)が青カビから見つけた人類初の抗生物質「ペニシリン」です。ペニシリンの発見は、それまで死因の上位を占めていた肺炎などの感染症の治療に革命的な効果をあげました。
琥珀から抗アレルギー物質を発見
バイオプローブが新しいものであれば特許が取れ、発見者が名前をつけることもできます。岩手県久慈市の特産である琥珀から見出した抗アレルギー活性のある物質は、「クジガンバロール(kujigamberol)」と名付けて商品化の話も出ています。久慈産琥珀は、8500万年前に生育していた植物の樹脂の化石です。西洋イチイという現代の植物から抗がん剤が実用化されているので、大昔の植物にも医薬品の種があるのではないかと予測したところ、最新のバイオテクノロジーの技術で新規物質を現代によみがえらせることができました。
食材である山菜のシドケから抗がん物質を発見
バイオプローブの活性を調べるには、遺伝子がヒトとよく似ていて食品産業でも使用される微生物の酵母を使います。がんの原因となるのは傷ついた遺伝子ですが、同じように遺伝子を人為的に異常にした病気の状態の酵母をつくり、そこに天然資源から抽出した物質を加えて、酵母が元気に生育するようになれば、活性(ヒトの病気に対する予防や治療効果の期待)があるということになります。最近では北東北や北海道で主に食されるシドケという山菜から単離したEDBDという物質が、マウスに移植したヒトのがんに効果があることが認められました。我々が日常食している食材にも、まだまだ未知なる可能性が秘められているのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 応用生物化学科 教授 木村 賢一 先生
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