「言葉」の正体を、量や距離で明らかにする
頭の中にある語彙
私たちの頭の中には、数万にも及ぶ単語が入っています。単語の集合体を語彙(ごい)といいますが、そのすべてを思い浮かべることは難しく、また「言われれば知っている」単語もたくさんあります。つまり、自分の感覚だけでは、頭の中にある語彙を正確につかむことはとても困難なのです。「計量言語学」という学問では、コンピュータやプログラムを用いて、言葉の量的な傾向や分布について分析し考えています。そして、ある単語が使われる頻度や単語同士の距離といったことを定量的に明らかにし、さらにその結果を天体図のような図に示すことで、日本語が私たちの頭の中にどのような形で入っているのかを示そうとしています。
言葉の印象の正体
「近隣の高等学校に通学する学生が海に落水した幼児を救出した」と「近くの高校に通う学生が、海に落ちた子どもを助けた」という文では、前者からはニュースや新聞に出てきそうな印象、後者からはやさしくわかりやすい印象を受けます。その印象は言葉のパターン、つまり中国語由来の「漢語」と、日本で古くから使われる「和語」が使われている割合に強く影響されています。私たちは本や文章を読んだとき、なんとなく難しい、簡単、好き、嫌いといった印象を抱きますが、文や文章の構造をデータや統計を用いて分析してみることで、そうした「印象」がどう生じるのかがわかります。
計量言語学の意義
学校で自分が書いた作文が教師から「わかりにくい」といわれる、あるいは会社で作成したビジネス文書が上司から「わかりにくい」と指摘されるケースは数多くあります。しかし、なぜわかりにくいのか、どうすればわかりやすくなるのかは、指摘した教師や上司であっても必ずしも明示できるわけではありません。こうした言葉の感覚的な扱われ方を捉えなおすことも、計量言語学の役割です。データや統計という裏付けをもとに文章を分析し、そこで得られた知見を体系化することで、誰もが実践しやすい文章の書き方が見えてきます。
参考資料
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就実大学 人文科学部 表現文化学科 講師 鯨井 綾希 先生
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