従業員が発言する場所 「労働組合」ってどんなところ?
日本における労働組合
「賃金」や「労働時間」といった労働者の待遇を改善するために、企業の経営陣に訴えかける組織を「労働組合」といいます。欧米諸国では、製造業や農業といった産業・職業ごとに労働組合が作られていますが、日本の場合は企業ごとに作られていることが多く、これは世界的に見ても珍しいケースといえます。欧米の場合は、基本的にその企業の従業員ではない外部の人も組合員であり、日本ではその企業の従業員が組合員です。つまり、普段は上司として関わっている相手に意見を伝える必要があるため、何も言えなくなってしまうというデメリットもあります。
こんな労働組合は機能する
従業員が上層部に対して起こすアクションを「発言行動」といいます。この発言行動は、「関与の発言」と「交渉の発言」の2種類に分けられます。「関与の発言」とは経営陣が把握していないような製造現場や顧客の情報などを集約して上層部にきちんと伝えること、「交渉の発言」は賃金・労働時間・職場環境などについて改善を求めることです。まず企業や組織全体のためになる「関与の発言」があるからこそ、待遇改善を訴える「交渉の発言」も同時に伝える事ができます。「関与の発言」と「交渉の発言」の大切さを理解している労働組合はうまく機能しており、待遇改善に向けて進んでいるケースが多いです。
従業員の声をどう伝えるか
従業員の意見が上層部に届くかどうかは、従業員もしくは労働組合が「一定の価値」を上層部に提供できているかどうかにかかっています。例えば、名前を書かず無記名で意見を出す場合や、匿名のSNSなどで発信する意見の場合、発言する人の責任やリスクは一切ありません。そうなると、ノイズが混じった発言も増えてしまい、本当に経営陣に伝えるべき発言が見えにくくなるという可能性もあります。とはいえ、匿名であっても意見を出すことは組織全体のためにもなり、それを排除することは問題です。労使双方で責任ある対話をどのように促すかが重要です。
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長野県立大学 グローバルマネジメント学部 グローバルマネジメント学科 教授 中川 亮平 先生
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