地震から機械を守る 安全・安心のための機械技術開発
機械の地震対策の必要性
東日本大震災の時の地震は、機械設備の設計などにおいて想定されていない大きさでした。そのため、多くの産業施設が破壊されてしまったのです。電気や水道・ガスなどのインフラ施設が破壊され、工場生産が長期にわたってストップし、生活や経済に多大な打撃を与えました。精密機械は建築物よりも繊細で壊れやすく、工場などの建屋の地震対策だけでは内部の機械の損傷は防げないため、機械独自の地震対策が必要なのです。
地震対策は大きく3種類
地震対策には、大きく分けて3つの方法があり、耐震、制振、免震と呼ばれています。耐震は、地震の揺れに耐えるように頑丈に作る技術です。制振は、制振装置により地震の振動エネルギーを吸収することで地震の揺れを低減します。免震は、免震装置により地震の振動エネルギーが建物や機械に直接伝わらないようにします。
機械の制振装置の例としては、動吸振器と呼ばれる装置が挙げられます。床の揺れを低減して機械を守るためには、どのような動吸振器をどこに設置すればよいかなどを知るために、研究が進められています。
リスク評価や地震発生後の対策も
地震対策立案の基盤となるのは地震リスク評価です。地域ごとに、どの程度の地震がどのくらいの確率で発生するかを地震学者が評価したデータに基づいて、地震の規模に対する機械の損傷確率を計算します。これは機械構造物の「地震フラジリティ評価」と呼ばれ、データサイエンスの基礎である確率・統計の知識を駆使して取り組む研究テーマです。
地震発生後の対応を考えることも大切です。例えば、機械が正常に動作しているように見える場合に、そのまま使い続けられるかを判断しなければなりません。この判断基準は規格として定められ、随時見直されています。例えば、原子力発電所内の配管は、従来では少しでもゆがみがあれば取り換えが必要とされていました。実験データの積み重ねなどから、現在の規格では「一定の手順で評価した結果により継続使用もできる」ようになっています。
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大阪産業大学 工学部 機械工学科 教授 前川 晃 先生
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