体を動かすだけじゃない! 私たちの概念を覆す筋肉の役割とは?

体を動かすだけじゃない! 私たちの概念を覆す筋肉の役割とは?

筋肉は「分泌臓器」!

私たちの体のさまざまな臓器で起こる炎症や強い抗酸化ストレスは、老化や身体機能の低下などをもたらします。それらを防ぐ因子が、筋肉から分泌されていることが最近の研究でわかってきました。これらのマイオカインやエクソソーム(筋べシクル)といった因子は、筋肉から分泌され、血流に乗って肝臓や肺、脳などの臓器に運ばれ、しっかり機能するように働きかけてくれています。それだけではありません。人の免疫反応を正常化し、がんの増加をおさえる作用があることもわかってきました。しかし、その前に私たちにとって大切なのは、因子がしっかりと分泌される「健全な筋肉」をつくることです。

あなたの骨格筋は健全か

筋肉は、医学用語で骨格筋といいます。現在の研究では、がん細胞を保有している、あるいは内臓になんらかの炎症があるマウスに、骨格筋から分泌された因子を添加して効果を証明しようとしています。また、マイオカインやエクソソームといった因子は複数の種類があります。どの種類のマイオカインがどういった状態のマウスに効果的か、また何を含んだエクソソームなら効くのかなど、あらゆる角度から検証し突き止めようと、このマッスルバイオロジーの研究は今、世界中で盛んに行われています。さらに人の骨格筋にどのような栄養や刺激を与えれば、きちんと因子を分泌する「健全な骨格筋」になるのかが明らかにされようとしています。今は血液検査によって肝機能や、認知症の予測までできるようになっていますが、将来は健全な骨格筋かどうかも、血液検査でわかるようになるでしょう。

筋肉から健康に

現在、理学療法士や作業療法士は、主にけがをした人の治療やリハビリテーションが必要な人を対象に活躍しています。しかし新たな筋肉の役割がわかってきた今、対象者は健康な老若男女、すべての人に広がります。筋肉からの健康づくりが当たり前になれば、医学の視点と筋肉を理解する理学療法士や作業療法士が疾病予防や健康維持のために社会貢献できる場は、ますます増えるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 医学部 保健学科 准教授 前重 伯壮 先生

神戸大学 医学部 保健学科 准教授 前重 伯壮 先生

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理学療法学、作業療法学、保健学

先生が目指すSDGs

メッセージ

理学療法や作業療法などのリハビリテーションは、高齢者の多い日本にとって重要な専門技術です。これまでは、病院で患者の方の生活動作を改善することが主な仕事でした。しかしこれからは、高齢者やあなたの保護者世代、さらにはまだ若いあなたも対象に、病気にならないための体づくりや生活支援を担うなど、仕事の幅が広がっていきます。今も公務員や健康増進関連の民間企業で活躍する人が増えています。ぜひリハビリテーションを勉強して、これからの日本を支えてほしいです。

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神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。