一部と全体が同じ形? 不思議な「フラクタル」の世界
樹木の枝、雲の形、雪の結晶もフラクタル構造
全体と一部分が相似な図形を、科学の用語で「フラクタル」と言います。例えば樹木にはたくさんの枝が生えており、太い枝から多くの細かい枝が分岐しています。この枝の「一部」を写真で撮影し、その画像を拡大すると、樹木「全体」と見分けがつきません。このように一部を取り出して拡大すると、全体とよく似た形が現れる構造を、フラクタルな構造と呼びます。
フラクタル構造は、空に浮かぶ入道雲や、六角形の雪の結晶、巻貝やタコの足など、自然界で多く見られます。しかし、なぜ自然がフラクタル構造を好むのか? 理由はまだ解明されていません。一説では、生物が進化の過程で優れた形を求めた結果、このような究極な形にたどり着いたと考えられています。
サッカーのようなチームスポーツにも出現する
フラクタル構造は、サッカーのような集団スポーツにも見られます。サッカーでは、両チーム22人の選手それぞれが、自分の意志で自由に動いていると思われがちです。しかし実は、ボールの位置とチーム全体の動きは、フラクタルに支配されています。
ボールを奪いたい、得点を取りたいという選手の気持ちがせめぎ合った結果、チーム全体の動きが、試合時間の全体と一部で互いによく似てしまうのです。こうしたスポーツのフラクタル性は、サッカーだけでなく、バレーボールやバスケットボールなどでも起こると予想されます。
フラクタル構造を取り入れて豊かな生活を
フラクタル構造を応用することで、私たちの生活が豊かになるかもしれません。2009年頃から商品化されるようになった「フラクタル日よけ」は、フラクタル構造をした木の葉っぱの生え方を参考に設計され、効率よく太陽からの熱を防ぐ日よけとして話題になりました。このほかにも、ハスの葉の表面にある細かい凹凸が水をはじくことを参考にして、ワックスを使わずに水をはじくフラクタル撥水技術が開発されています。こうした自然の知恵に学ぶフラクタル技術は、これからますます盛んになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 生命環境学部 環境科学科 教授 島 弘幸 先生
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