通訳者の頭の中では何が起こっているのか

通訳者の頭の中では何が起こっているのか

通訳・翻訳は言葉の置き換えではない

通訳や翻訳は、ある言語の語彙(ごい)や文法を、別の言語に置き換える作業だと考えられています。しかし実際に行われている通訳や翻訳には、単純に「言葉の置き換え」では説明できない要素がたくさん含まれています。例えば話している人の表情・しぐさや現場の様子、発話の時間や場所といった非言語的情報、あるいは文化的な差異や社会的な権力といった背景情報などが、耳から入ってくる言語情報と同様、言葉の理解を助けています。
通訳・翻訳研究の目的のひとつは、人が通訳や翻訳をするとき、頭の中では何が起こっているのかを分析し、人間が言語を使う認知の仕組みを明らかにすることです。

言葉を理解する仕組みがわかるとどうなる?

近年、AI(人工知能)による翻訳はめざましい発展を遂げています。一方、人間が言葉を理解する仕組みはいまだ完全には解明されていません。今後、研究が進み、人間が言葉を理解する仕組みが解明されていけば、AIによる通訳や翻訳はさらに大きな発展を遂げる可能性があります。これによりグローバルなコミュニケーションや、異文化間の交流に貢献することが可能になるのです。

母語を活用した外国語教育への貢献

「外国語教育における翻訳(Translation and Interpreting in Language Teaching:TILT)」についての研究も重要です。英語を中心とする最近の外国語教育では、訳を排除する傾向が強く、オールイングリッシュによる授業や、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を外国語のみで運用する活動が重視されてきました。
一方で、外国語の習得は母語を土台として知識や技能を積み上げられるものであり、母語を通して蓄積された豊富な知的資源は、積極的に活用すべきとの考え方もできます。通訳や翻訳の仕組みを理論化し、実際の外国語教育への具体的な活用方法を見出すことも、この分野の重要な役割なのです。

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広島修道大学 人文学部 英語英文学科 教授 石塚 浩之 先生

広島修道大学 人文学部 英語英文学科 教授 石塚 浩之 先生

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言語学、英語学、英語教育学

先生が目指すSDGs

メッセージ

世界はとても広く、実際に自分で経験できることはごくわずかです。しかし、書物の中には古今東西の人々の経験と知恵が詰まっています。自分の進路を選ぶには、できるだけ多くの本を読むことをお勧めします。世の中にはあなたの感性を刺激するものがたくさんありますが、今のうちに自分の手でページをめくり、一冊の本を読み切る力をつけてください。
そして受験生には、限られた時間を効率よく使うためにも、授業で学ぶ内容をしっかりと身につけてほしいと思います。高校での学びが大学での研究を有意義なものにしてくれます。

先生への質問

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「個」を育み、伸ばす。それは、約290年前、本学の前身・浅野藩の藩校「講学所」の時代から受け継がれる教育理念です。
広島修道大学では平成22年度「大学生の就業力育成支援事業」に選定されるなど、学部での学びはもちろんのこと、学生一人ひとりの自己実現をバックアップするさまざまな取り組みを行っています。
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