「若者言葉」がヤバい! それは日本語の乱れ? 最先端の言葉?
「ヤバい」は両方の意味に使う
高校生から30歳ぐらいの人が使う「若者言葉」は、日本語の乱れととらえられがちです。しかし、将来の日本語を先取りした「最先端の言葉である」と考えることもできます。
「ヤバい」という言葉はよく使われています。もともとは、寝坊した時や電車に乗り遅れそうな時のように、焦ったり、追い込まれたりした様子を表す言葉でした。しかし現在では、おいしいものを食べたり、きれいな風景を見たりした時にも使います。つまり、よい状況と悪い状況の両方で使用しているのです。「ヤバい」は自分の想定を超えた場合の言葉に変化し、言葉自体で状況を判断するのではなく、文脈で判断する必要があるのです。「このケーキ、ヤバい」という文だけでは、おいしいのかまずいのかわからないので、前後の文脈で判断するのです。これは日本語の持つあいまいさの伝統の流れをくむ言葉であるとも考えられます。
「ら抜き言葉」は言葉の論理化
若者言葉に「ら抜き言葉」があります。「見れる」「食べれる」などですが、本来は「見られる」「食べられる」です。助動詞の「れる・られる」には受身・尊敬・自発・可能の複数の意味があります。どの意味で使われているのかは、文脈で判断する必要があります。ところが「ら抜き言葉」は、その中の「可能」だけを表しています。ある意味で言葉が論理化されたと考えることもできるのです。
日本語の大変革期
文脈で判断する言葉になった「ヤバい」や、文脈ではなく言葉自体で意味が判断できる「ら抜き言葉」など、若者言葉は新しい時代の表現を求めて、いろいろな方向に変化しています。現代の日本語は、室町時代に日本語が古代語から近代語へ移っていった時以来の大変革期にあると言われています。ほとんどの言葉は時代とともに消えていくと思われますが、いくつかは一般的な日本語として定着していくので、若者言葉を無自覚に使うのではなく、日本語として見つめ直し、意識して使っていく必要があります。
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大阪教育大学 教育学部 教員養成課程 国語教育部門 教授 井上 博文 先生
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