学校給食で郷土料理を伝承する
白米だけと思わせる郷土料理
広島県福山市には「うずみ」という郷土料理があります。一見すると、おわんに盛った白米にだし汁をかけただけの簡素な料理ですが、実は白米の下には焼いたタイや厚揚げ、ゆでたエビ、サトイモとニンジンの煮物などの具材が隠れています。この料理の起源は江戸時代にさかのぼり、福山藩の初代藩主が倹約令を布告してぜいたくを禁じた結果、具材を白米で隠して食べるようになったことから始まったと言われています。
伝統的な調理法を現代の調理器具で
伝統的なうずみは、食材ごとに焼く、ゆでる、煮るといった別々の調理法で仕上げる、大変手間がかかる料理です。そのため現代の家庭では調理しづらく、次第に作られなくなってきました。そこで、学校給食でうずみを提供する調理法が研究されています。学校給食では大量の調理が必要なため、スチームコンベクションオーブンという調理器具を使用します。これはヒーターによって熱した空気を循環させて加熱する機器であり、モードを切り替えることで、焼く、煮る、炒めるなどの多様な調理が可能です。最終的に伝統的な調理法で作られたものと同じ料理になるようにスチームコンベクションオーブンでの調理手順を確立して、どこの給食施設でも調理できるようになることが目標とされています。
これからも郷土料理を継承するには
日本には、地域ごとに独自の食材や調理法を用いた、その風土に合った固有の郷土料理が存在します。郷土料理を食べることは、その地域の文化や歴史を理解する上での手助けとなるものです。かつては一つの家に多世代が暮らしていたため、郷土料理は親から子へ、その子どもたちへと脈々と受け継がれていきました。しかし、核家族化が進み、特に現代では料理にも効率化が求められるため、家庭内での郷土料理の伝承が難しくなっており、多くの郷土料理が失われつつあります。学校給食で郷土料理を提供できれば、作る技術の継承まではできなくても、少なくとも食べる経験によって料理を継承できるのではないかと考えられます。
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