分子レベルで探る! 食べ物と健康の深い関係

食物と健康
私たちが口にする食物には栄養素が含まれており、それらが体内でどのように利用され、健康に影響を与えるのかを栄養学では考えます。例えば、「魚を食べると頭が良くなる」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、その詳しいメカニズムを考えたことはありますか? 生化学や分子生物学といった学問が発展し、生体成分や遺伝情報の仕組みが徐々に解明されたことにより、食物や栄養素が人間の健康、あるいは病気にどのような影響を与えるかが、「分子」レベルでわかるようになってきました。
タンパク質の働き
私たちが筋肉を動かしたり、食べた物を消化したり、免疫を働かせて病気を防いだりするのには、細胞の中にあるタンパク質の働きが深く関わっています。DNAがもつ遺伝情報がRNAに転写されて、そこから各種のタンパク質が合成されることを「遺伝情報の発現」といいます。この発現の段階で、食物などから吸収される栄養素が重要な役割を果たしているのです。
一つの細胞には、数千種類以上のタンパク質が存在しています。これを詳細に観察すると、タンパク質が複雑に折り畳まれたり(フォールディング)、特定の場所へ輸送されたりしていることがわかります。それぞれのタンパク質は非常に精緻かつ複雑なメカニズムによって機能しています。ここで、例えばフォールディングがうまくいかないなどの何らかの異常が起これば、アルツハイマー型認知症や、白内障をはじめとする老化の原因になるといわれています。
科学的かつ論理的な探求
どのような食物を摂取すれば健康を維持できるのか、あるいは病気を引き起こすのかは、人間が生きていく上で極めて重要な問いです。特に、健康な人から病気を抱える人まで、幅広い対象に対して食事指導や栄養管理、栄養に関する相談業務などを担う管理栄養士にとって、こうした知識は不可欠です。科学的かつ論理的な視点からそのメカニズムを深く理解することは、人間の健康を多角的に考察する上でも、極めて重要な取り組みなのです。
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先生情報 / 大学情報

山形県立米沢栄養大学健康栄養学部 健康栄養学科 教授成田 新一郎 先生
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