音楽ライブは地域を盛り上げる
音楽ライブに使うお金
2010年代以降の音楽ビジネスにおいて、リスナーへの楽曲提供はCDからサブスクリプションによる配信に移り変わり、収益はライブで上げる時代になりました。ライブを見に行く人はチケットやグッズ代だけでなく、会場までの移動やライブ前後の飲食、あるいは宿泊や会場周辺の観光にもお金を使います。ある大学で、ライブに参加した約100名の学生にアンケート調査を行ったところ、一度あたりの参加で平均43,817円、宿泊を伴う場合は56,479円も支払っていることがわかりました。チケット代はその内27%にとどまり、その他多くの支出が会場周辺のお店やホテルに流れています。
広島のケース
このアンケートをもとに、全国のコンサート関連支出を推計したところ、2兆円近くになることがわかりました。また、8千人以上を収容する全国の大規模ドーム・アリーナの17会場には、年間2,273万人が来場していることが推計できます。大規模会場には宿泊を伴う「遠征」をする人が数多く来場するため、会場のある地域への経済効果も大きくなりますが、その多くは首都圏や関西、福岡に集中しています。中国地方を代表する都市である広島は、会場、ライブの開催数ともにほかの都市に比べて少なく、広島の若者たちはライブのたびに県外へ出かけて県外でお金を使っているのです。
経済学の力
総務省の2023年の調査では、広島県の人口流出数は全国1位です。人々が県外へと流れるのは、広島県には、若者に人気の都市型サービス業が少ないことが影響していると考えられます。加えて、音楽ライブ会場・開催数が少ない、つまり文化的な魅力に乏しいことも関係していると思われます。ライブに伴う支出や経済効果、あるいは会場や来場客というデータから、ライブの開催や会場の少なさという課題が客観的に明らかになりました。こうした研究は、若者が暮らし続けたいと思える、持続可能な街のあり方を考える上でも、大いに役立つのです。
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先生情報 / 大学情報
広島文教大学 人間科学部 グローバルコミュニケーション学科 教授 松原 淳一 先生
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