鮮度を可視化 安全安心な水産物を届ける技術開発
鮮度をリアルタイムで可視化する
安全安心な水産物を消費者に届けるための技術開発が行われています。一例が、鮮度を色の変化で表示する「バイオサーモメーター(BTM)」です。魚介類の鮮度は「K値」と呼ばれる指標で表すことができますが、一般の消費者にはなじみがなく、機器による分析が必要で時間もかかります。しかしBTMを使えば、K値と積算温度(温度と時間をかけあわせた数値)を誰でもリアルタイムで確認できます。K値が低いほど水産物の鮮度が高く、BTMはK値と積算温度の値が小さいと薄い色に、大きいと濃い色に変化するため、魚のパックに取り付ければ、消費者自身が鮮度を判断する目安になります。
新技術導入のリスクとは?
BTMの基本技術はすでに完成していますが、まだ実用化には至っていません。取り付けるタイミングによる鮮度偽装の心配はないのか等解決すべき問題がいくつもあるからです。また、水産業ならではの事情もあります。海が荒れて漁に出られないときに備えて、魚介類の出荷タイミングをあえて遅くする場合があるからです。すると出荷時点でのK値が高くなり、消費者から選ばれなくなるおそれがあります。一方で、鮮度の高さを売りにしたい産地では、BTMの導入に肯定的な意見を持つ方も多くなってきました。また、BTMを流通経路のリスク管理ツールとして利用することも効果的だと考えています。流通の途中で低温状態を保てず温度が上昇する等の不測の事態が起こった場合でも、BTMを見れば魚介類等の生鮮食品の鮮度が保たれているかすぐにわかるからです。
災害食を目指した取り組み
BTMで積算温度と品質履歴が担保された生鮮食品を加工して安全に食べることのできる期間を長くする研究も始まりました。常温保存可能な魚介類や鶏肉のような食品があれば、災害時の非常食や防災用備蓄材料として役立ちます。手法のひとつが、食品に直接電気を流して加工する「通電加熱」です。通電加熱によりムラなく加熱殺菌された鶏肉の場合、約1年間の常温保存に成功しています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 教授 濱田 奈保子 先生
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