日本人と法律
法律はどこから来た?
普段、私たちの権利をしっかりガードしてくれている法律。日本に民法の原型ができたのは明治維新の頃で、フランスとドイツの法律を参考にして作られました。
ここで興味深いのは、ヨーロッパ各国の民法のルーツがローマ法ですから、それぞれに似通った部分が少なくないということです。とりわけフランスとドイツは、互いにそれぞれを参考にしながら、作り上げてきた経緯があるため酷似しています。
ローマ帝国が滅亡した後、ゲルマン諸民族は独自の法を用いていましたが、12世紀頃からローマ法が復活します。その際にそれぞれの国がローマ法を基に法律を制定しました。中でもプロイセン(ドイツ)の法は、先進的な内容で他国の模範とされました。ナポレオンがフランス民法を作る際には、プロイセンの影響を少なからず受けています。そしてナポレオンの占領時代には、ドイツの各地で、フランス民法の翻訳を活用するようになるのです。時は経ち、ビスマルクによってドイツ統一がなされて、ドイツ民法を制定する際には、ローマ法を軸にして、かつてのプロイセン法やフランス民法が参考にされました。
日本は皮肉にもルーツを同じくするヨーロッパ各国の法律を全く別のものとしてとらえ、その選択採用に関して侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を交わしていたというわけです。
日本の法意識
このように、日本ではヨーロッパの民法を研究して実際に取り入れもしましたが、いまだに「法律に対する意識が薄い」との指摘を受けます。その原因は、我が国が長年ひたってきた律令制度の影響が大きいからでしょう。個人の利益が封建社会の中で守られてきたために、「民事には深く関わらない」という意識が根付いてしまったのです。
それに対してローマ法は、個人の利益を守ることを目的にしているので、ヨーロッパ社会では、国が積極的に個人の利益や権利に関わるという文化が築かれてきました。
実のところ、この「同じ立場にある人には同じ権利を」という考えは、日本の「思いやりの精神」に通ずるものがあります。ですから、アプローチは違っていても、根っこの部分において日本とヨーロッパの考えは、そんなに遠く離れているとは思えません。
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