スペイン語の単語はどう変化した? 資料の断片から音を推理する

スペイン語の単語はどう変化した? 資料の断片から音を推理する

同じ単語から生まれた二つの単語

現代のスペイン語は、ラテン語が様々な変化を経てできたものです。特に音は長い歴史の中で大きく変わっています。例えば、ラテン語の単語のはじめに見られる “cl” や “pl” は、民衆に使われるうちに変化して、スペイン語では “ll” でつづられる音になりました。現代では主にヤ行やジャ行に近い音で発音されます。例を挙げると、“CLAVE(M)” 「鍵」というラテン語の単語は、スペイン語では “llave”という形になっています。しかし、その一方で比較的ラテン語に近い “clave” という形も残っており、「謎を解く鍵」や「パスワード」という意味で使われています。一つのラテン語の単語からなぜ二つの単語が生まれたのでしょうか。

日常の言葉と学問の言葉

形が二つできた要因は、使い手や場面の違いだといわれています。 “llave” のように “ll” に変わっている単語は、「住居の鍵」のように日常的に使う具体的な意味を持つのが普通です。一方、知識人たちは、書物や文学作品を書く際に、当時の教養語としてのラテン語の単語を、そのままに近い形で取り入れることもありました。そのようなラテン語を思わせる単語は、“clave”「謎を解く鍵」のように、抽象的で難解な意味を持つ傾向があり、現代では異なる発音や意味を持っているのに、元は同じ単語だったというペアが多くの言語に見られます。

音の変化の謎を推理

録音技術が発明される以前の音は、現代では耳にすることができません。そのため、音の変化は、外国語に含まれるスペイン語由来の単語の発音や、当時の知識人の発音に関する記述など、断片的な証拠から推理するしかありません。時には、語呂合わせができることや、詩で韻を踏んでいることで、元は違う発音だった2つの単語が、その時代には同じ発音になっていたのだろうと推測することもあります。書かれたものから得られる手がかりを組み合わせて、消えてしまったスペイン語の音に迫るという研究もあるのです。

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神奈川大学 外国語学部 スペイン語学科 教授 菊田 和佳子 先生

神奈川大学 外国語学部 スペイン語学科 教授 菊田 和佳子 先生

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スペイン語学、スペイン語史

先生が目指すSDGs

メッセージ

スペイン語史を研究すると、スペイン語の単語や文法規則が生まれた背景が見えてきます。複雑に見える文法規則も、それができた理由がわかると「なるほど!」と思えるようになるかもしれません。新しい言語に挑戦するのは勇気も根気もいりますが、すでに知っている日本語や英語とはまた違った発想が得られます。広いスペイン語圏にはあなたが知らない文化や、その文化に根ざしたそれぞれの価値観があります。色々なものに触れて視野が広がると、あなた自身も成長できますし、それが言語を学ぶ楽しさにつながると思います。

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1928年創立以来、真の実学をめざし、自ら成長できる人材を育成してきました。近年では2021年、グローバル系3学部が集うみなとみらいキャンパスが誕生。2022年、「建築学部」を開設、2023年には理工学部を改組し「化学生命、情報学部」を開設。文理11学部すべてを横浜エリアに集結させ、世界レベルをめざす総合大学として、新たな一歩を踏み出しました。
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