住宅・住宅地の利用段階でのお困りごとを解決するには
完成は終わりではなく、利用の始まり
住宅・住宅地も、建物・ハードの完成が終わりではなく、そこから長きに渡る利用が始まります。時間と共に、人々・社会のニーズも変化し、建物・ハードは劣化・陳腐化します。快適に安心して住み続けるためには、適切な管理・運営が必要です。しかし、多くの住まい手は、知識・経験が乏しい素人です。建築専門家といった人々の協力や、管理・運営を支える生産・社会の仕組みが求められています。
お困りごとに直接アプローチ
住宅・住宅地のお困り事を解決に向けた第一歩は、お困り事の実態把握です。住まい手の目線はもちろん、地域も含めて長期的・俯瞰的に見る視点も重要です。調査方法は、実際に住宅地を歩いて行う目視での実態調査や住まい手等へのインタビュー、アンケート取材が主体です。例えば住宅のリフォームの際、住まい手には「修理を誰に依頼したらよいかわからない」という悩みがあり、調査の結果、不安を持ちながらも、人づてに知った工事業者に依頼している実態がわかりました。一方で業者にも調査が行われた結果、相互の信頼関係を育む必要性が浮き彫りになりました。解決策として、信頼の根拠となる能力の見える化の重要性が指摘されています。このように、課題やその要因を明らかにした上で、必要な社会の仕組みを探究していきます。
よりよいまちづくりへ
住宅地に関する研究は持続可能なまちづくりに直結する重要なテーマです。例えば、新興住宅地と既存集落が混在する地域で、それぞれに居住満足度の調査を行った研究があります。住みよさの評価基準として、新興住宅地の住民は生活利便性を重視する一方で、既存集落の住民は、地域での人とのつながりや「お互いさま」という気持ちを重視していました。人口減少が進む社会において、ハード整備やサービス提供により生活利便性を高めることには限界があります。「近所付き合いやお互いさまで助け合える環境づくり」は持続可能なまちづくりの鍵として、自治体の施策の中でも重視されています。
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