知られざる天才! 世界が認めた戦前の日本アニメ監督

謎に包まれていた天才アニメーターの素顔
今、日本アニメは世界中で人気です。その歴史をさかのぼると「日本アニメーションの父」と呼ばれる重要人物がいます。政岡憲三という天才アニメーターです。現在の東映アニメーションの前身となるスタジオで活躍し、数々の個性的な作品を残しました。政岡と直接会って話を聞いたスタジオジブリの高畑勲監督が、後年にその思い出を本に寄稿するなど、多くのクリエーターに影響が及んでいます。しかし、政岡の経歴は長年謎に包まれていました。そこで謎を解明するために開始された調査は、京都の古い美術学校の記録から始まりました。そこから遺族の元に眠っていた貴重な資料や、美術学校時代の絵画作品が次々と発見され、知られざる天才の素顔が明らかになっていったのです。
アニメの先を行く異端児の正体
政岡の作品には独特の魅力があります。政岡は京都の美術学校で本格的な美術教育を受け、能楽やバレエ、クラシック音楽まで幅広い教養を持つ「インテリ」でした。国内のアニメーションではいち早く、音の付いた作品の制作や、細かい表現が可能なセル画を取り入れるなど、新しい技術を取り入れます。その深い知識と感性が生かされた作品は、同時代のアニメーションと比べて、際立って高い映像表現を実現していました。まるで芸術家がアニメーションという表現方法を選んだかのような作品は、今見ても新鮮な魅力にあふれています。
世界に認められる日本アニメの源流
政岡自身は戦後のアニメ制作には直接関わりませんでしたが、彼が育てた弟子たちが日本アニメ界で中心的な役割を果たしました。政岡の作品は日本の古典アニメーションとして世界中の芸術系大学で教材や研究対象となり、芸術性の高さが注目されています。文化庁主催の海外上映企画でも取り上げられ、世界の映像研究者たちからも高い評価を集めています。
新しいアニメが次々と生まれる現代だからこそ、その源流を知ることで、世界が認める日本の誇るべき文化としての日本アニメの魅力をより深く理解できるでしょう。
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帝京大学 文学部 日本文化学科 講師 萩原 由加里 先生
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