環境と生態系バランスはミジンコに聞け!
トランスフォームするミジンコ
環境の保護には、多様な生物たちがどのように共存しているのかを知る必要があります。例えば、水中で食物連鎖の底辺に位置するのがミジンコです。
ミジンコは形や行動を変えながらたくましく生きています。ミジンコを食べる捕食生物が水中にいますが、ミジンコはその環境に合わせて自分の姿を変えます。甲殻類であるミジンコは、脱皮して頭や尻にトゲを出現させます。このトランスフォームによって、捕食者に食われにくくなり、少しでも生き残ろうとするのです。
クローンでも個々で違う姿に
最初からトゲがある姿で生まれればいいかといえば、そうはしません。捕食者がいない環境であれば、トゲを持つことは、移動に邪魔だったり、脱皮がうまくできなかったり、不便なことが多いからです。だから、捕食者が同じ環境にいる時にだけ、トゲをもつ工夫をしているのです。
このように、環境に応じて姿を変えることを「表現型可塑性」といいます。人間が筋トレなどで筋肉をつけることも、表現型可塑性のひとつです。中身(遺伝子型)は同じですが、外見や行動(表現型)を変えることでほしいものを手に入れようとするのです。
ミジンコは同じ遺伝子を持つクローンで生まれますが、姿かたちを変化させる発現の程度は個々で異なります。つまり、環境に適応して姿を変えるのです。多くのバリエーションがあり、その発現の多様性も大切なのです。
生態系や環境のバロメーター
環境の悪化を感知するとミジンコは、種を残すために耐久卵を生みます。この卵は、ミジンコの普通の卵とは異なり、乾燥や水質悪化の中でも保存され、環境が改善されると生まれます。なぜミジンコは環境が悪くなることを予測できるのかは不明で、まだ解明されていません。
絶滅の危険があると人が気づいた時には、すでに手遅れの場合があります。そうなる前に環境や生態系バランスの変化がわかれば、種の絶滅を防ぐ可能性は高まります。そのカギを握るのはミジンコであり、その生態が自然保護の指針となり得るのです。
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先生情報 / 大学情報
京都先端科学大学 バイオ環境学部 生物環境科学科 ※2025年4月開設 講師 永野 真理子 先生
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