働きやすい環境とは? 介護職のワーク・ライフ・バランスと組織風土

介護職を続ける難しさ
高齢化が進む中、介護の仕事は人材確保が急務の課題である職種の一つです。介護職は女性の多い職種ですが、勤務形態は夜勤もある不規則なシフト制の場合も多くあります。そのため、出産や育児、家族の介護といったライフイベントとの両立が難しくなり、結果的に職場を離れてしまうことが少なくありません。介護職自体は社会にとって大切な仕事なのにもかかわらず、長く続けることの難しさを抱えています。
ワーク・ライフ・バランスに着目すると
介護職として長く働き続けるためには何が必要なのか、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」に着目するという研究の視点があります。WLBとは、仕事と私的生活とのバランスのことです。組織によるWLB支援の一つは「制度」ですが、育児・介護休業や時短勤務といった制度が整っていても、職場にその制度を使いにくい空気があれば、機能しないでしょう。効果的な制度運用には、使いやすい職場の雰囲気や、一緒に働く人々の理解が欠かせません。実際の研究の中では、「働く人同士のサポート」や「お互いさま」の意識、「行動のお手本になる人(ロールモデル)の存在」などが重要であることがわかってきました。こうした組織風土(職場の雰囲気)が築かれることで、「働き続けたい」というモチベーションにつながっているのです。
組織風土を育むために
WLBに支援的な組織風土を定着させるには、組織の「マネジメント」も重要です。WLB支援に積極的な事業所へのインタビュー調査では、管理職や経営層が制度の目的を明確にした上で、現場のニーズを的確に把握して制度をアップデートしたり、働き方に柔軟性を持たせたり、現場ワーカーとの対話を重ねている様子が見えてきました。これらの実践の積み重ねが、介護の現場を支える土台になっているのです。
さらに、そのような組織風土を醸成するためには、組織のトップやミドルなどといった「マネジメントの階層」ごとに求められる役割についても、今後さらに研究が展開されていく必要があります。
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京都先端科学大学 経済経営学部 経営学科 准教授 大竹 恵子 先生
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