新たな付加価値を持つ植物を作り、届ける!

日本のイチゴは、なぜ甘い?
私たちが食べる農産物のほとんどが、選抜と交雑による品種改良や育種がなされています。新しい品種を生み出す方法の一つが「倍数性育種」です。高等生物は遺伝子情報の入った染色体を雄と雌から1組ずつ受け取る2倍体が多いのですが、植物は染色体を2倍体以上にすると実が大きくなり、糖度や栄養成分が増すなどの特長が現れます。その特性を生かして、より消費者に喜ばれる農産物を作ることができます。「あまおう」などの実が大きくて甘いブランドイチゴは、8倍体とされています。また、染色体を3倍体などの奇数体にすると種を小さくできるため、種なしスイカなどを作るのに役立っています。
新しい食品としてのクワの可能性
絹織物生産に欠かせない養蚕業が盛んな土地では、カイコの餌となるクワの栽培が行われています。このクワにサフランから抽出したコルヒチンという薬剤を用いて4倍体にした品種を作ったところ、葉が大きくなるだけではなく、その葉を食べたカイコもその繭も大型化して、収穫効率が上がりました。葉の栄養成分も従来種よりカルシウム、マグネシウムが増え、「陸の魚」と称されるほどです。また3倍体にした品種では、種が小さくて食べやすく、糖度も高い、ブルーベリーの5倍ものアントシアニンを含んだ実ができました。アントシアニンは視力回復に効果があると言われています。どちらも粉末にしたり加工したりすることで、健康食品としての大きな可能性を秘めています。
育種するだけがゴールじゃない!
植物の育種は、種類によっては何年もかかることがあり、日々、植物の世話と観察を続ける必要があります。しかし、これまでにない新しいおいしさや付加価値を創造できる分野です。魅力的な品種を作り、それをブランド化・製品化して上手に販売すれば、農家の人たちや地域の産業・経済を助けることにもなるでしょう。これからの育種学は、育種だけではなく、育種した農産物をどう活用するまでを見据えた研究が期待されています。
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創価大学理工学部 共生創造理工学科 ※2026年度より理工学部グリーンテクノロジー学科 准教授久米川 宣一 先生
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