スポーツにも美容にも効く 鍼灸の科学的エビデンスを探れ!
「鍼灸学」とは
鍼灸(しんきゅう)学とは、中国を起源とする伝統的な医学で、現在主流の西洋医学とは異なる体系をもっています。鍼灸学では、人間の体の健康は、「気」という目に見えないエネルギーと、「血」という血液や体液などの物質の流れのバランスで保たれていると考えられています。そして、「経絡(けいらく)」と呼ばれるエネルギーの通路のようなネットワークが体内に張り巡らされており、そこにツボ(経穴)という要所があるとされています。
ツボを刺激して不調を治す
主な治療法は、症状に従ってツボに直径0.1mm程度の細い針を刺す「鍼(はり)」や、「もぐさ」という繊維の塊をツボの上で燃やして熱を与える「灸(きゅう)」の2つです。鍼や灸でツボを刺激することにより「気血」のバランスを取り、自然治癒力を高めることで病気を治します。
鍼灸学では、「未病(みびょう)を癒やす」ことが大切にされています。未病とは「強い症状はないが、なんとなく調子が悪い(不定愁訴)」という状態を指し、そのときにツボを刺激して自然治癒力で改善し、大きな病気を防ごうという考え方です。そうした考え方があることから、鍼灸学はアスリートの体調管理や、美容業界でも活用されています。
鍼灸治療に科学的エビデンスを
日本には「はり師」「きゅう師」という国家資格があり、西洋医学とは別の医療行為として認められています。しかし最近になって、鍼灸学を西洋医学的な観点で説明できるように、科学的エビデンスを探る研究が進んでいます。
例えば、ツボを皮膚の上から軽く刺激する「触刺激」によって、脳内の神経伝達物質のセロトニンが増えるという研究結果があります。セロトニンは、リラックスに関わるホルモンです。鍼治療のあとに眠くなる人が多いことは、鍼灸の治療現場でよく言われており、このリラックスホルモンに関わる研究は、それを裏付けるものと言えます。鍼灸学の研究が、医療全体の発展を推し進めていくと期待されています。
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先生情報 / 大学情報
常葉大学 健康プロデュース学部 健康鍼灸学科 教授 中澤 寛元 先生
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