歩き方を見つめ直して転倒予防! 健康寿命を延ばす予防理学療法
必要性が増す予防理学療法
従来の理学療法は、病気やケガなどで生じる基本動作能力の低下を最大限に回復させることを主な目的としてきました。急激な高齢化の進行は、医学における予防の重要性への再認識を促し、理学療法分野でも健康寿命を延ばしてQOLを向上させる予防理学療法の必要性が強く認識されています。予防理学療法にはライフステージに応じたテーマがあり、有病率の高い後期高齢者では再発予防や介護予防が重要です。一方で前期高齢者においては、健康増進に努めることで転倒やロコモティブ・シンドロームを予防することが重視されます。
ウォーキング講座から健康増進のヒントを探る
転倒は、下肢筋力や歩行速度の低下と密接に関連しています。近年では転倒予防において、足趾把持(そくしはじ)力と呼ばれる足の指で床をつかむ力の重要性が注目されるようになりました。地域の中で前期高齢者を対象に行われているウォーキング講座では、足趾把持力やバランス能力を測定するとともに、3軸加速度センサを腰や両足首に装着して歩行パターンや歩行速度などの指標も検討し、健康増進に結びつく歩き方のコツなどがアドバイスされています。こうして得られたデータを分析した結果、足趾把持力と歩き方の関係には男女差がみられ、男性高齢者では大股で速く歩くことが足趾把持力の維持に好影響を与えていることが確認されました。
最適な運動を継続する方法は?
今日、さまざまな足趾把持力のトレーニング方法が開発され、介護予防講座などで効果の検証がなされています。このような講座には女性の参加者が多く、男性には敷居が高く感じられることも多いようです。そのため、一人でウォーキングしていることが多い傾向にある男性高齢者が、もし健康増進に有効な歩き方を理解し、その効果を日々の運動から実感できれば、男性が一人でもウォーキングを続ける動機づけにつながるでしょう。予防理学療法は、得られた知見から身体状況の変化を論理的に説明することで、最適な運動の継続に役立つのです。
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先生情報 / 大学情報
常葉大学 保健医療学部 理学療法学科 准教授 松村 剛志 先生
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