世界中の研究成果を精査して、効果的な医療を提供できる未来へ

医学研究の成果と医療現場で治療でのギャップ
世界中で医学に関するさまざまな研究がなされていますが、その成果は実際の医療現場でどこまで活用されているのでしょうか。あるいは、病院に行って何らかの治療を受けたとき、その治療法は本当に効果的なものなのでしょうか。
多くは最善の治療法が提供されていますが、施設や医療従事者間では治療法の選択基準が異なるケースもよくあります。一部の診療科・部門では、伝統的な治療が慣習的に行われてしまっているケースもあります。
全ての文献を統合した新たなスタンダードの構築
これに対し、世界中の科学的データを検証して最新の「エビデンス(科学的根拠)」を導き出せれば、最適な治療法を全ての医療現場に応用することができます。そのための「システマティックレビュー」という手法が昨今非常に注目を浴びています。これは、特定の方法を用いて世界中の関連する文献を網羅的に収集し、研究を一定の基準で評価・要約・統合する手法・研究デザインです。
実際にシステマティックレビューを行うと、通説とされていることが意外に効果的ではない場合があることがわかります。一例として、体を柔らかくするにはストレッチより普段の散歩などの何気ない活動が、筋力をつけるなら筋トレよりタンパク質を摂取したほうが効果的な場合があるのです。より効果的な医療を提供するために、各診療科において、システマティックレビューを使った診療のガイドラインづくりが最近ではさかんに行われるようになってきました。
データサイエンスで導く最適な医療
海外では、エビデンスを重視した治療のガイドライン作成が数多く実施されていますが、日本ではまだ十分な量や質を伴っていない診療科も少なくありません。データサイエンスに基づいたこの手法が普及・浸透すれば、日本の医療の質の向上に貢献できます。また、個人が払う医療費のうち7~9割は税金から支払われていますが、その医療費を決して無駄にすることなく、より成果の高い治療に適切に使われる社会をめざすことができます。
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信州大学医学部 保健学科 理学療法学専攻 助教北川 孝 先生
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