講義No.13872 児童学 教育

子どもがつくりだす環境の世界 

子どもがつくりだす環境の世界 

保育は子どもを理解しようとすることから始まる

保育者を目指しているあなたは、大学に入ったら手遊びの仕方や言葉かけの仕方といった、すぐ役に立ちそうな技術を学びたいのではないでしょうか? もちろん技術を身につけることも必要ですが、保育者の専門性は技術をつかって知識を教え込んでいくことではなく、子どもが思わず関わりたくなるような環境をつくり、自分から経験を得ていけるように援助することにあります。そのために、まずは目の前の子どもがいま何に興味をもっているのか、何を感じているのかなどを丁寧に捉えていくことが大切です。保育という営みは、子どもを理解しようとすることから始まります。

子どものなかに立ち現れる環境を捉える

保育の「環境」とは、子どもをとりまく全てです。しかし、どんなに物がたくさんあったとしても、子どもがそれに気がつかなかったり、遊びや生活のなかに位置づけられなかったりしたら意味のある環境にはなりません。なので、あなたが「良い環境をつくりたい!」と思ったら、子どもをとりまく全てのなかから、その子がどれを自分にとって意味のある環境として捉えているのか、その環境をどう意味づけているのかを理解しようとする必要があるのです。いま、子どもの心のなかに立ち現れる環境を探究する研究が始まっています。

自分の環境をつくることは世界を広げること

子どもが環境をつくりだすということは、ただ外側にある環境を自分の内側にコピーして取り込むことではありません。一人ひとりの子どもが、これまでの経験やいまの興味関心を踏まえて、自分にとって意味のあるものとして捉えてなおしていくことです。たとえば砂場で深い穴を掘りたい子どもにとって、スコップの円いくぼみは土を入れてかき出すお皿になり、円いくぼみにくっついた棒はテコの原理で土を起こすための力点となることで、その子にとっての「スコップになる」のです。このように子どもが環境をつくりだしていくことは、そのまま自分の世界を広げていく過程といえるのではないでしょうか。

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常葉大学 保育学部 保育学科 講師 甲賀 崇史 先生

常葉大学 保育学部 保育学科 講師 甲賀 崇史 先生

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メッセージ

「どういう人が保育に向いているの?」と聞かれたら、「一番大切なのは子どもが好きなこと」と答えます。それさえあれば、ほかのことは後から身につけられるし、なんとかなることが多いからです。ピアノや運動が苦手……はまったく問題ありません。むしろ苦手がある保育者の方が、同じ苦手がある子どもの気持ちに共感できるのではないでしょうか。また、保育者は明るくて活発な人が向いているというイメージもあるようですが、静かに傍らに寄り添ってくれる保育者が好きな子どももいます。自分の良さに気づき、伸ばせば良い思います。

常葉大学に関心を持ったあなたは

2013年4月、常葉学園大学・浜松大学・富士常葉大学の3大学を統合し、新たに法学部[法律学科]、健康科学部[看護学科・静岡理学療法学科]を加え10学部を擁する「常葉大学」が誕生しました。3大学を統合することにより、各大学が培ってきた教育成果を融合。スケールメリットや学部・学科の多様性を生かし、教育研究活動全体の質の向上を目指します。
「知徳兼備」「未来志向」「地域貢献」の3つを教育理念に掲げ、未来の国や社会のために真に広く貢献できる人材を育成します。