子どもがつくりだす環境の世界
保育は子どもを理解しようとすることから始まる
保育者を目指しているあなたは、大学に入ったら手遊びの仕方や言葉かけの仕方といった、すぐ役に立ちそうな技術を学びたいのではないでしょうか? もちろん技術を身につけることも必要ですが、保育者の専門性は技術をつかって知識を教え込んでいくことではなく、子どもが思わず関わりたくなるような環境をつくり、自分から経験を得ていけるように援助することにあります。そのために、まずは目の前の子どもがいま何に興味をもっているのか、何を感じているのかなどを丁寧に捉えていくことが大切です。保育という営みは、子どもを理解しようとすることから始まります。
子どものなかに立ち現れる環境を捉える
保育の「環境」とは、子どもをとりまく全てです。しかし、どんなに物がたくさんあったとしても、子どもがそれに気がつかなかったり、遊びや生活のなかに位置づけられなかったりしたら意味のある環境にはなりません。なので、あなたが「良い環境をつくりたい!」と思ったら、子どもをとりまく全てのなかから、その子がどれを自分にとって意味のある環境として捉えているのか、その環境をどう意味づけているのかを理解しようとする必要があるのです。いま、子どもの心のなかに立ち現れる環境を探究する研究が始まっています。
自分の環境をつくることは世界を広げること
子どもが環境をつくりだすということは、ただ外側にある環境を自分の内側にコピーして取り込むことではありません。一人ひとりの子どもが、これまでの経験やいまの興味関心を踏まえて、自分にとって意味のあるものとして捉えてなおしていくことです。たとえば砂場で深い穴を掘りたい子どもにとって、スコップの円いくぼみは土を入れてかき出すお皿になり、円いくぼみにくっついた棒はテコの原理で土を起こすための力点となることで、その子にとっての「スコップになる」のです。このように子どもが環境をつくりだしていくことは、そのまま自分の世界を広げていく過程といえるのではないでしょうか。
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