インド人の考える「きれい」とは? 生き方を左右するヒンドゥー教
インドはきれい?
インドに対して、衛生的に心配、生活環境があまり清潔ではない、というイメージが思い浮かぶかもしれません。しかしインドの人々は、自分たちが考える「きれいな暮らし」を実践しています。この「きれいさ」は、西洋的な衛生観念とは異なります。インドに根付く宗教であるヒンドゥー教の「浄なるもの」を生活に取り入れて、「不浄なもの」を避けているのです。
生活を決める「浄と不浄」
例えば食文化にはヒンドゥー教の浄と不浄の影響が見られます。ヒンドゥー教の最終的な目標である解脱(げだつ)を達成するには、浄なるものを体内に取り入れて、不浄なものを避けなければなりません。野菜や果物、ミルクなどは浄なるもので、食べると穏やかな人格になれると信じられています。一方でキノコをはじめとする菌類、肉や酒などは不浄とされています。そのためインドには菜食主義者が多いのです。また、ヒンドゥー教徒はきれいに洗った自分の右手がもっとも浄なるものと考えています。そのため浄なるものを浄なる手段で体内に取り入れようと、右手でご飯を食べています。
衣類にも浄や不浄という概念があります。インドの民族衣装で有名なサリーや、男性用の腰布のドーティーには縫い目がありません。浄なる衣装には縫い目がない、と考えられているからです。そのためヒンドゥー教の大切な儀礼ではサリーとドーティーが着られています。
謎だらけのヒンドゥー教
衣食などインドのあらゆる文化に根付いているヒンドゥー教ですが、実は開祖すらわかっていません。聖典や教典もなく、生まれてから死ぬまでの教徒の生き方すべてがヒンドゥー教だと考えられています。そのため異教徒や外国人からすると謎が多く、理解が難しい部分もあります。外国人が不思議だと思うヒンドゥー教の謎の数々を明らかにする鍵は、教徒の日々の暮らしの中にあると考えられます。ヒンドゥー教徒の生活を実際に体験して、何を大切にしているのか、何を禁じているのかなどの価値観を理解しようと研究が続いています。
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亜細亜大学 国際関係学部 多文化コミュニケーション学科 教授 小磯 千尋 先生
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