デジタル修復で映画の魅力を再発見! 20世紀初頭の撮影技法

デジタル修復で映画の魅力を再発見! 20世紀初頭の撮影技法

デジタル修復がもたらす効果

映画は19世紀末に誕生し、世界中で多くの作品が作られてきました。現代の人々からすると、「昔の作品は色や音がなくて劣っている」「画質が悪い」などの先入観を持つかもしれませんが、必ずしもそうとは限らず、驚くべき技術的水準に達しているものも少なくありません。作品本来の持ち味を、現代に伝える技術のひとつが「デジタル修復」です。アナログフィルムをデジタルデータに変換して、経年劣化した部分を修復します。フィルムに含まれる情報をより細かく読み取れるようになり、映像の分析もしやすくなります。

20世紀初頭の撮影技法

デジタル修復された映画を分析すると、昔の技術が後の時代よりも劣っているとは言い切れないことがわかります。例えば1910年代にオーストリアで作られた無声映画『きよしこの夜』には、2つの画面を重ねながら場面転換をする「オーバーラップ」という技法が使われています。現代ではデジタル編集で簡単にできますが、1910年代はカメラ1台で表現していました。まず1つ目の映像を、光量を絞りながら撮影します。次にカメラのフィルムを巻き戻して、少しずつ明るくしながら2つ目の映像を撮影します。すると1つ目の映像に2つ目の映像が重なって記録され、オーバーラップしているように見えるのです。一発勝負でリスクのある撮影技法ですが、2つの映像が非常になめらかにつながるため、美しい場面転換になります。

新技術の長所と短所

その後、2つの映像をそれぞれ撮影し、現像したフィルムを編集段階で合成する手法が生まれました。その場合は失敗のリスクは低いものの、フィルムを複製する手順が必要です。紙をコピー機にかけたときと同じで、フィルムは複製すると画質が落ちます。そのため映像の美しさはカメラ一台で完結する技法のほうが優れていました。ほかにも20世紀初頭の映画には、限られた機材で創意工夫に富んだ映像を生み出していた痕跡が見られます。こうした表現や技法の変化に注目して、映画の歴史や特徴が研究されています。

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獨協大学 外国語学部 ドイツ語学科 准教授 常石 史子 先生

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表象文化論、映画研究、メディア研究

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