経済学でオタクカルチャーについて考える
経済学は懐が深い
経済学は、お金の動きや経済活動に限って研究される学問ではありません。もちろん、お金は経済学の重要な一部を占めますが、それ以外にもさまざまな要素が絡み合っています。
例えば、サブカルチャーやオタク文化について、今まで多くの社会学的、文化論的なアプローチがされてきました。しかし現在ではオタク文化と経済学を組み合わせて、経済的影響だけでなく、そこに関連するホスピタリティなどまでを考察する研究が進められています。
「心」にも関心を向けた広がりある研究
オタク文化と経済の関係は、人の「心」にもつながる学問である「行動経済学」を用いながら研究を進めていくことが可能です。いわゆる何かに「ハマる」現象を取り上げた研究では、オタクの消費行動の背景にある心理的要素、コミケなどで見られる売り手と買い手との1対1の関係性の存在が、オタク文化の原動力になっていることが判明しました。つまり経済を動かすのは心のある人そのものであり、その意味では「経済学=人間学」ということもできるのです。
また、昔は金銭を介さない物々交換の慣習がありました。その際には欲しいもの、提供したいものを交渉でやりとりしていたことから、そこにホスピタリティが存在したと考えられます。ただ、取引きとしては効率が悪く、ホスピタリティは経済の発展に伴って徐々に薄れていきました。この点について考察した結果、ホスピタリティが充足されなくても文化・経済は発展する、しかし人が感じる満足度は減っていくことがわかっています。
探究心に経済学をプラスして新たな発展を
今後経済学は、さらに広い範囲を巻き込んで発展を続けると考えられています。例えばオタク文化・サブカルチャーの経済学的研究では記憶に残るコンテンツ、残らないコンテンツの間にある差異と、それが生じる原因についての研究も進展していくと予測されます。その際には、心理学、社会学などの専門家と共同して研究が行われ、新しい知見にたどり着くことができるのではないか、そんな期待ももたれています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
京都橘大学 経済学部 経済学科 准教授 牧 和生 先生
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文化経済学、行動経済学、経済心理学先生が目指すSDGs
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