温度と物質濃度をリアルタイムにとらえる新技術の開発
冷却は、熱と物質を輸送すること
冷蔵庫やエアコンの冷却する仕組みがどうなっているか、知っていますか。
これらは、物質が気化するときに熱を奪う性質を利用して空気を冷やしています。「冷媒」と呼ばれる物質をコンプレッサーで圧縮して液化し、それが気化するときに熱を奪うことで、空気を冷やすことができるのです。このように、熱の移動を仲介する物質の特性やどのように熱を輸送するかということを研究するのが、伝熱工学、熱物質輸送工学という学問です。冷蔵庫やエアコンのメーカーでは、冷媒や冷やす仕組みを改良するなど、より効率的に熱を輸送する研究が進められてきました。それが製品の開発につながっているのです。
超小型発電機の開発に使われる伝熱工学
家電分野での熱輸送の技術は、ある程度成熟してきましたが、現在は、この技術をもっと小さい機器に応用する研究が始まっています。
例えば、手のひらにのるような超小型の燃料電池が現在開発されています。燃料電池は主に、水素と酸素を反応させて発電しますが、この反応をより効率的に行うためには、これらの物質の量や温度などを制御したり、流れる経路(流路)の設計を工夫したりする必要があります。しかし、流路は、数十ミクロンと、髪の毛ほどに細い場合が多く、その中を通る物質の濃度や温度を測定することは極めて困難でした。
物質の温度と濃度の変化をリアルタイムに撮影
そこで、現在行われているのが、化学反応で生じる物質の濃度と熱の変化を、近赤外線カメラという特殊なカメラで撮影する技術の開発です。
水素と酸素の反応では水が生成されますが、この技術を用いると、その水の量を知ることができます。熱の変化を知る方法には、サーモグラフィがありますが、サーモグラフィが「表面」の温度を撮影するものであるのに対し、この技術は、「流路の中」の物質の温度を撮影するものなので、内部で起きている化学変化をリアルタイムに把握することができます。この技術が完成すれば、効率的な超小型発電機や携帯用医療機器の開発が可能になるでしょう。
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