SNSやスマホの写真、専門家の写真作品から見えてくる現代社会
SNSや写真から見える現代社会
ひと昔前までは、写真は出来事を記録し、後々にそれを見返して懐かしく振り返ったものが思い出でした。しかし、今はむしろ「思い出をつくる」ために出かけ、現実よりも「盛れた/映えた」写真を撮って、SNSにアップしています。
自己像の変化もあります。かつては、基本的に「一つの一貫した自分」を突き通すのが美徳とされていた時代もありましたが、今は、SNS上の複数アカウントで趣味用や友だち用などで上手に自分を使い分け、大幅に外見を加工した写真でやりとりしていても、「それら全てが私」なのです。
つまり、複数の自分を存在させることに強い抵抗感も抱きませんし、写真はたんに現実の正確な記録や証明ではなく、現実を変えたり、表現したりするツールにもなっているのです。
写真から考える現代社会
専門家の写真家によって制作された、現代社会を問う作品も数多くあります。
ある写真家は、街中の自動証明写真機を使って、自ら多くの女性の姿に変身して撮影した作品を発表しています。メイクや髪形を変えるだけで、簡単にいろいろな存在になれてしまうのなら、外見はどこまで「私」を表わすものと言えるのでしょうか。
ほかにも、東京の街を撮影し、デジタル処理して看板やネオンを削除した作品があります。のっぺらぼうで無機質な風景となりますが、それは現代都市の性格を表わしてもいます。私たちはそこでいかに豊かに生きていけるのかという課題を突きつけられています。
写真で現代社会に発信する
このように写真は、「現代社会」を考える気づきを与えてくれます。
写真は見るだけのものではありません。たとえば、みんなで現代社会について考え、より良いあり方を模索するために写真を活用することもできるのです。そういった「フォト・プロジェクト」の活動も本格的に始まっています。
写真を読み解き、写真でテーマを表現し社会に発信していくことで、私たちはどのような社会を生きているのか、また生きていくべきなのかをみんなで深く探究することができるのです。
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先生情報 / 大学情報
横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 角田 隆一 先生
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